モンドリアン、民芸館、野口哲哉

電車の吊広告で『ひのとり』を見て、久しぶりに乗りたいと思ったのでイベントを調べると、豊田市美術館で『モンドリアン展』を開催中。9/20までだった。
モンドリアンはむかし兵庫県立近代美術館で開催された『デ・ステイル展』で観たことがあるが、「コンポジション」以前の作品が多く観られるというので出かけることにした。延ばし延ばしにしていた豊田市民芸館にも寄ることにした。
すぐの平日に行く予定だったが、近くの美術館で9/18より『野口哲哉展』が開催されることを知り、こちらも観ようと今日になった。でも雨を我慢して昨日か一昨日にすればよかった。

というのはこのお客さんの入り。チケット売場の行列に驚き、展示室の混雑に驚いた。最終日だし祝日だったからだろうか。みなさん静かに鑑賞していたが、どうにもばつが悪かった。
抽象画への気づきとなった「ニステルローデの納屋」、キュビズム風の「女性の肖像」や「風景」、コンポジション前夜となる「コンポジション 木々2」や「色面の楕円コンポジション2」などが興味深かった。「コンポジション」では普遍性の変遷が垣間見れておもしろかった。

次は豊田市民芸館。企画展を開催していることは知っていたが、全館を使っているとは知らなかった。おかげで民藝品は観られなかったが、この展示空間を見ることが目的だったのでかまわなかった。でも、あとで館の方に聞いた円空仏コレクションは観たかった。
先の投稿にも書いたが、この展示室はもともと日本民藝館にあったもので、改築する際に本多静雄氏が譲り受け豊田市へ寄贈。市はこれを用いて第1民芸館を整備し、その後第2、第3と発展していったのだとか。つまりこの民芸館は公営。全国の民芸館でもめずらしい。特別展は有料(とはいえ300円)だそうだが通常は無料。トヨタさまさまとおっしゃっていた。
床の大谷石にミソがなかった。1級品を使っているにしても、ここまできれいなものは見たことがない。表面がすべすべしていたので、すり減りついでにミソも消えたのだろうか。
他に建具などを譲り受けたそうだが、天井はどうなのだろう。館の方はご存じなく、ネットを調べてもわからない。中央の照明器具は年月を感じさせるので譲渡品だとすれば、これにマッチしている天井もやはり譲渡品だろうか。先日改修を終えた日本民藝館大展示室の天井は、プレーンで凝ったつくりではないが、これくらいの意匠でもよかったのではないだろうか。

大谷石と漆喰の蒲鉾目地が日本民藝館を彷彿とさせる。二期倶楽部にも同様の意匠があった。知らなかったが、二期倶楽部は星野リゾートに買収されてしまったそうだ。建物は再利用されているそうだが、二期倶楽部だったときに訪ねたかった。惜しいことをした。
とても気持ちのよい場所だったが、第3民芸館の意図がわからなかった。収蔵部分があるのかボリュームが大きく威圧的。田舎家を再現したそうだが、ツルピカなので旅館のロビーのよう。田舎家を見せたいので民芸品はおざなり。税金の無駄遣いと怒られそう。

最後は刈谷市美術館で『野口哲哉展』。豊田市民芸館から1時間と遠くなく、最寄り駅が名古屋へ戻る途中の乗り換え駅だったのでちょうどよかった。180点も展示していたそうだが、雑誌か何かでチラッと見ただけの身にとって、一度にほぼすべての作品を堪能できてラッキーだった。
鎧兜を纏っているが武士ではない。所在なく佇んいたり眠っていたり、風船を眺めていたり玩具に乗っていたり、ヘッドフォンで音楽を聴いていたりスマホを持っていたり、シャネルやヴァレンティノとコラボをしていたり。彼がつくるのは侍ではなく、時代を超えた普遍的な人間の姿そのもの。誰もが持っている寂寥感に、彼独自のユーモアやアイロニーが織り込まれている。
図録にカナダのキュレーターが寄稿している。彼の「武士」は『ラストサムライ』のネイサンよりも『たそがれ清兵衛』の清兵衛に近い。過度に美化するのでなく自然体で安らか。

Grand Helm & Cheap Japanese

ご自身だろうか。Grand Helmは大兜でよいと思うが、チープな日本人とは何を意味するのだろう。インタビューや文章を読むに頭脳明晰のようだが、作品名も一筋縄ではいかないのか。

cheap wings

紙でできている指物(旗)を現代に表現。段ボール紙の翼は脆いが軽いそうだ。
ニュートラルな顔の表情に惹かれるそうだ。日々の暮らしの中でも、喜怒哀楽よりもニュートラルな表情をしているときのほうが多いだろう。だから作品の顔には表情をつけないそうだ。

TRANSMISSION~ジャーマン・スペシャル~

主題の意味はわからないが、副題のジャーマンは靴がビルケンシュトックだからだろうか。甲冑や兜の意匠には驚くようなものがあるが、果たしてこの兜は実在したのだろうか。

Clumsy heart

ハートは会場で直接描いているとか。「不器用な心」のほうが落ち着く。
他にも撮影したのだが、映り込みや構図が気に入らないので割愛。図録を購入しておいてよかった。A4サイズなので画像や図版が大きく、プロの接写がとてもきれい。
民芸館を早く出たので2時間もあったのだが、一点一点つぶさに観たので時間がかかり、最後の展示室を出たときは閉館直前。おかげで紹介映像が見られなかった。
刈谷から名古屋まで乗った列車は「新快速」だったが、「新快速」の元祖はJR西日本。大阪万博が開幕した1970年から走っている。近鉄名古屋駅に着くとすでに『ひのとり』が入線していた。いつもの天むすとビールを買い込み、ゆったりくつろぎながら帰途に就いた。

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