小田さんは終活を始めたのだろうか

録画していた『クリスマスの約束』を見た。最終回なので見ることをためらい、いままでぐずぐずと引き延ばしていた。小田さんが番組終了を宣言するところを見たくなかった。
最終回は放送時間が最も長く、2部構成になっていた。とはいえ、第1部は小田さんやアーティストの登場はなく、過去の放送から『22’50”』と『最後のニュース』を、第2部は新しい収録パートが序盤と終盤にあり、中盤では過去の放送をダイジェストで振り返っていた。
テーマ曲『この日のこと』の詞にあるように、この番組の真髄はゲストとの共演だと思う。印象深かった演奏は、2003年は財津和夫さんの『青春の影』、根本要さんの『木蓮の涙』。2004年は山本潤子さんの『卒業写真』。2006年の斉藤哲夫さんははじめてお目にかかったが、『グッド・タイム・ミュージック』はお気に入りの曲となった。2007年はさだまさしさん、くるりの『JUBILEE』、矢井田瞳さんとの『恋バス』、佐野元春さんの『SOMEDAY』。『恋バス』は番組で生まれた曲だが、小田さんのコーラスワークがすばらしく、最後の対旋律に鳥肌が立つ。2013年は吉田拓郎さん、2014年は細野晴臣さん、2015年は和田唱さん。唱さんとのパートはレギュラー化したが、マンネリに感じていた番組に新風を吹き込んだと思う。2016年の宇多田ヒカルさんは、2001年の初回放送で出演を依頼した1人。同じ依頼をした桜井和寿さんは翌々年に出演を果たしたが、宇多田さんは15年かかった。ようやく時が満ちたのだろうか。2017年の熊木杏里さんの『新しい私になって』は、2006年の資生堂のCM曲。制作現場が上田義彦さんの『プロフェッショナル仕事の流儀』に映っていた。2019年はKANさん、松崎ナオさんの『川べりの家』。KANさんはこの頃はまだお元気で、カウント出しが可笑しかった。2021年は長屋晴子さんの『Mela!』。意外だったが、歌番組で小田さんの『キラキラ』を歌った縁だそうだ。
最終回を見てからというもの、保存している過去の放送を順に見ているが、2007年の放送を見ていてハッとした。提供テロップの背景でくるりと小田さんが『ばらの花』を演奏している。すぐさまウェブサイト『Far East Café』へ飛び、DVDソフト『LIFE-SIZE 2007』の商品ページを確認すると、「くるり 京都音楽博覧会」の文字。やはり収録されていた。当時は『LIFE-SIZE』のことを知らず、『京都音楽博覧会』のソフト化もなかったので、すっかり忘れてしまっていた。念のため『Far East Café』へ問い合わせると、30秒程度だが収録されているとのこと。くるりの『ばらの花』はお気に入りの曲だが、この演奏は別ものと化している。『恋バス』同様コーラスワークが光るアレンジで、やはり最後のパートの対旋律に鳥肌が立つ。佐橋佳幸さんのギターが彩りを添えている。
収録されているのであれば購入したいが、もはやそれは叶わない。『LIFE-SIZE』は小田さんの事務所が制作販売している商品で、小田さんの活動を記録した月刊の新聞『Far East Café PRESS』の購読会員でなければ購入できないのだが、昨年11月20日に新規購読会員の募集が終了してしまった。
PRESSは2025年10月号で終了し、以後の情報はウェブで紹介していくそうだが、ウェブ会員制に移行するでもなく、詳細は後日となっている。時間があるので追々発表されるのだと思うが、一方である疑念が頭をもたげた。小田さんは活動の終了を決めたのだろうか。「さよならは言わない」と言いながら、いよいよそのときが近づいてきて、自然消滅や事後報告ではいけないと考えを改めたのだろうか。だからまずは身辺整理とモバイルサイトを閉鎖し、『クリスマスの約束』や『Far East Café PRESS』を終了することにしたのかもしれない。でも募集終了は11月20日なのに、告知したのは11月1日。猶予がひと月もないとは非常識ではないか。おかげで『明治安田 Presents Kazumasa Oda Tour 2025 みんなで自己ベスト!!ツアー』のチケット先行予約の機会を得ることができなくなった。
PRESSの購読会員になれば、DVDソフトやグッズの他に、コンサートチケットを購入することができる。コンサートが近づくと番号を記した紙が同封され、申し込みページにアクセスすることができる。チケットは抽選制とのことだが、希望会場や公演日で一度も外れたことはなく、申し込めば必ず入手できていたので、手間の必要なチケットサイトで購入するより便利だった。
会員は1年と半年の2通り。熱狂的なファンはおそらく1年会員を継続し続け、チケット申し込みの機会を逃すことはないのだろうが、私はコンサートのときだけ半年会員になる俄かファン。ウェブサイトもたまにしか訪れないので、知らなくても文句は言えないか。
長くなってしまったが、最後にもうひとつ。『クリスマスの約束 2007』では、『JUBILEE』の他に『ばらの花』も演奏していた。しかも京都音楽博覧会バージョン。『クリスマスの約束 2014』でも過去放送のダイジェストがあり、そこに少しだけ映っていた。これもすっかり忘れてしまっていた。