年縞博物館

福井出張。前乗りすることになったので、早く出て若狭湾にある内藤さん設計の年縞博物館を訪ねた。敦賀駅から小浜線で30分。三方駅から徒歩20分。あいにくの空模様だったが、おかげで訪問者は少なくゆっくり鑑賞することができた。
建築を見たかったのはもちろんだが、はじめて知った年稿という言葉に惹かれていた。英語ではvarve。年層と訳すそうだが、高名な地理学者が年縞と名づけた。なんとも詩的で情緒がある。
展示のメインは7万年分の地層。近くの水月湖からボーリング採取したサンプルを、薄くスライスしてステンドグラスに仕立てている。地層は1年に0.7mm堆積するそうで、ステンドグラスの全長は45mにも及ぶ。だから建築はこれほど長くリニアなわけだが、勾配のきつい長大な屋根のおかげで、印象は強く風格がある。
学芸員の方に詳しく解説していただいた。湖は日本海に面していて、水月湖とほかに4つの湖が連なっている。350年前の寛文時代に起きた地震の地殻変動でつくられたそうだが、中央にある水月湖は海川からの流入がないので澱みがなく、湖底に酸素がないので生物はほとんどおらず、沈降が続いているため湖が埋まらない。つまり堆積するには格別の場所で、軌跡の堆積物と呼ばれている。だからこのサンプルはとても貴重で、2012年ユネスコで世界標準に選ばれたそうだ。
なんだかうれしかった。世界中の研究者がこのサンプルをもとに研究しているのだ。
少し時間が残っていたので、隣にある『若狭三方縄文博物館』へ。縄文時代の杉の大株や土器、この地の遺跡や貝塚から出土した品々が展示されていて、なかなか見ごたえがあった。
建築も神殿のような趣きで、打ち放しコンクリートの荒々しい量感を感じさせた。設計は横内敏人さん。横内さんといえば繊細な住宅というイメージなので意外だった。