簡素でよい

洗濯機を新調した。いま使っているものは社会に出てはじめて買ったもので、かれこれ15年は使っている。一度も壊れていないし、まだ使えると思うのだが、いま暮らしを一新すべく進行中で、粗大ゴミが増えることにためらいながらも、十分に使ったのだと言い聞かせた。
家電の技術は日進月歩だが、洗濯機はすでに成熟したものと考えていた。ところが電気屋さんへ行くと、乾燥機能つきは当たり前、斜めドラムや横ドラム、ビートウォッシュにAgイオン。技術開発に終わりはないのだと思い知らされた。
どれにすればよいのかわからず呆気にとられていると、店員が話しかけてきた。「いまの洗濯機は選ぶのに大変でしょう」「そうですね。途方に暮れてしまいます」いま使っている洗濯機の機能で十分。できればステンレス槽と浴室ポンプがあればいいと伝えると、「それで十分です。メーカーはやれ乾燥機能や斜めドラムと頑張りますが、機能があればあるだけ壊れやすい。そんなものに10万円も払うのは馬鹿げています」そう聞いた途端胸の内がすうっと軽くなった。
家事が楽になるのはよいことだが、なんでもかんでも機械に頼るのはいかがなものか。洗濯物は天日で干すのがよいに決まっていて、機械で乾かした衣類は縮むのではないかとハラハラする。斜めドラムや横ドラムは壊れやすいという話を耳にする。
結局、標準スペックとなってしまった申し訳程度の乾燥機能とステンレス槽、浴室ポンプがついただけの簡素なものにした。これでまた15年くらい頑張ってくれるだろう。
余談だが、いまはどこのお店もポイントカード制になっていて、まけてもらう楽しみが減った。ポイントカードは客を囲うためのものなので、カードを持たない一元さんには冷たい。あるお店で見たPOPがそれを物語っていた。商品にはPOPが2枚貼ってあり、一方はポイントカードを持つ客向きで、29,800円とポイント11%つき。もう一方はポイントカードを持たない客向きで、値段は同じく29,800円。同じ値段なのだから、ポイントカードを作ったほうが得だと店員は勧めるが、いらないのでその分負けてよと返したところ、そっぽを向いて行ってしまった。