主人公たちを優しく包む長崎のまちがよい。石畳の坂、趣のある古寺、真白な教会。
キャスティングもよかった。難しい役を好演した大沢たかおさん。彼を温かく見守った二人の女性―石田ゆり子さんと富司純子さん。彼女たちの立ち姿は凛として気品が漂っていた。そして、松村達雄さんもいぶし銀の演技を見せていた。
この作品の監督・磯村一路さんは、むかし映画館で見た『船を降りたら彼女の島』の監督だった。瀬戸内の美しい風景や、主人公の揺れ動く思いを静かに綴った佳作。押尾コータローさんがつま弾くギターの音色が印象に残っている。
監督は美しい場所が好みのようだ。まもなく公開される『雨鱒の川』は北海道が舞台。『がんばっていきまっしょい』の舞台は愛媛だった。瀬戸内の景色は穏やかで美しい。