はじめての那智瀧。Googleマップでルートを調べてのけぞった。列車だけで3時間半もかかる。一番列車で到着が11時半、帰りは最終列車が18時台。選択の余地なく行程が決まった。駅から瀧まではバスで25分、徒歩だと2時間半。運動のノルマに往路だけでも歩こうと思ったが、ほかにも寺社などを訪ねたかったので時間が読めず、大門坂のみ歩くことにした。
移動中はひたすら読書に耽った。ガイドブックと一緒に買っておいた『熊野古道(岩波新書)』が思いのほか面白く、どんどん読み進めるうちに紀伊勝浦駅に到着。帰りも同様にして、目が疲れたらガラガラのパンダシートを眺め、「シュールだ」とつぶやいたりした。
はじめて見た那智瀧は壮観だった。あまりに高く、仰げば天に上る白龍のように見え、思わず空へ向けて手を合わせた。『熊野古道』に書いていたが、那智を含む熊野詣の歴史は平安時代にまでさかのぼるそうで、彼らも同じこの場所で眺めたかと思うと感慨もひとしお。いつか彼らがここへ辿った道を歩いてみたいと思った。
杉本さんが撮影した場所はすぐにわかった。道路から目立つ場所だったので、三脚を見つけた車が何台か止まり、同じようにカメラを向けていたのがなんだか可笑しかった。