原田和明さんのオートマタ

原田和明さんの『話せば長くなる』が届いた。前著の『話せば短くなる』は原田さんのオートマタ作品の作品集だったが、本著は原田さんがオートマタ作家になるまでの歩みやインタビューが収録されている。作品同様に茶目っ気のある文章で、終始ニヤニヤしながら読んだ。
原田さんの作品を知ったのはいつだったか。たしかどなたかのInstagramで『エクササイズ』が紹介されていた。からくり人形には無知で、江戸時代に流行した盆に茶碗を載せて運ぶ人形や文字を書く人形、現代では映画『鑑定士と顔のない依頼人』に登場した人形くらいしか思い浮かばず、どれも夢に出てきたら怖そうな容姿だが、『エクササイズ』はピンクのブタが息を上げながらダンベルカールをするというもので、口元が緩んでしまう可愛らしさ。
好みの作品は名前やつくりや動きがシュールなもの。箸が転ぶだけの『箸が転んでも可笑しい』、靴がタップを踏むだけの『フレッド・アステアの靴』、複雑なからくりの末に匙が飛ぶだけの『匙を投げる』など、どれもセンスがよくて感心する。そんななか一番好きな作品は『へそで茶を沸かす』。仰向けに寝た人のへその上に薬缶が置いてあり、手足をばたつかせながら薬缶や蓋が動くというもので、いつの日にか家へお招きしたいと思っている。からくりやその箱などに、ウォールナットやチェリーなどの材料を用いるこだわりも素敵。
有馬玩具博物館にも行ってみたい。原田さんの恩師の西田明夫さんたちが作った施設だそうで、原田さんは現在この施設の顧問。いろんなオートマタが展示されているようで楽しそう。