クラフト・エヴィング商會

クラフト・エヴィング商會という名の創作ユニットがいる。まるでいにしえの貿易会社のようだが、執筆や、装丁や、グラフィックデザインをご夫婦で手掛けている。
クラフト・エヴィング商會名義の著作は、あまりにノスタルジックでマニアックなので少し取っつきにくいのだが、吉田篤弘さんが書く小説は好んで読む。
彼らのことを知ったきっかけは、友人が薦めてくれた『つむじ風食堂の夜』物語はもちろん、タイトルや装幀、帯の言葉に惹かれた。前日譚ともいうべき『フィンガーボウルの話のつづき』もよい。16の短編が収められているが、まったく別の物語というわけでもなく、すべてが微かにつながっている。そのつなぎとなるのがビートルズの『ホワイトアルバム』。センスがよい。
そういえば村上春樹さんの新作が発売される。『アフターダーク』とは何やら不穏な響き。カバーのグラフィックにも違和感を覚える。直訳すれば闇のあと。『世界の終わりとハードボイルドワンダーランド』のような物語になるのだろうか。