コンラン卿逝く

テレンス・コンランさんが亡くなった。あこがれの人がまたひとり行ってしまった。
彼をはじめて知ったのは書籍だった。洋書を扱う書店のインテリアコーナーに、Coと背表紙に描かれた本が並んでいた。彼の会社とOctopus出版が共同で設立したConran Octopusという出版社だった。『HOUSE BOOK』『Kitchen Book』『SMALL SPACE』などを買い求め、素敵なインテリアの写真を飽きることなく繰り返し眺めた。その後、彼がセレクトした家具や雑貨を扱うお店―コンランショップ―を知った。日本にもACTUSなどのセレクトショップが存在していたが、お店づくりのセンスや商品のセレクトは群を抜いていた。
1994年、新宿にリビングデザインセンターOZONEがオープンした。住まいに関するショールーム的な施設だが、目玉として誘致したのがコンランショップだった。あこがれのお店が日本にできたと喜び、オープンしてすぐに訪れた。2フロアにわたる売り場に見たことのない商品が並んでいて、まるでおもちゃ売り場にいる子供のようにワクワクしながら歩き回った。
彼にあこがれるもうひとつの理由はビバンダム。ミシュランタイヤのマスコットキャラクターだが、このマスコットが好きでいろいろなグッズを集めていた。
彼がビバンダム好きだと知ったのは、『テレンス・コンランのホームデザイン倶楽部』という番組だった。ご自宅のサイドテーブルの上に、ビバンダムの灰皿が置いてあるのを見つけた。
その後、たしかCASA BRUTUSのコンラン特集だったと思うが、画像のミシュランハウスが紹介されていた。ミシュラン支社だったこのビルをOctopus出版と共に買い取り、コンランショップやレストランなどを設えた。レストランにビバンダムという名前をつけ、食器にビバンダムのイラストが刷られてあるのを見て、彼のビバンダム愛が半端でないと知ってうれしかった。