ナウシカ考

マンガ『風の谷のナウシカ』は本棚のなかで何度も読み返す一冊。購入したきっかけは雑誌『ぴあ』で久石譲さんの紹介文を読んでのこと。映画はじつはマンガの1/3しか描かれておらず、そのへんの哲学書よりも優れていると。驚いた。読まずにはおれなかった。
ネットやネットショップのない時代。あちこち書店を巡り、マンガ専門店でようやく見つけたが1万円もした。廉価版もあるが取り寄せになるという。待っていられないので大枚をはたいた。
急いで家へ戻りひと息に読んだ。さらなる人物やさらなる舞台、巨神兵、根底を覆す事実。めくるめく世界に読み終えて茫然となった。なんという壮大な物語。涙があふれて鼻水が垂れた。
熱くなった。この本は歌舞伎版『風の谷のナウシカ』が上演されたころ、気になりネットを徘徊していて見つけた。これまでもナウシカ解読本があることは知っていたが、興味がないので手に取ることはなかった。この本のあとがきにも書いているが、愉しいエンタメ作品やマンガを論じることに意味があるのかと思うし、このマンガを論じることは容易くないだろう。でも結局購入したのは、タイトルやカバーや帯に魅せられたから。ブックデザインは大切なのだ。
著者は25年ものあいだ解読を続けているそうだが、私もこの本を読むのに手こずった。普段使わない漢字を用いた単語が多くあり、知らない引用元が多くあった。癖のある言い回しや繰り返しの記述に何度も頓挫した。でも考察には共感できたし、第四章の『黙示録』は興味深かった。
あとがきで著者は書いている。『源氏物語』や『罪と罰』を読むように、マンガ『風の谷のナウシカ』が読まれることを願う。それはすでに古典なのかもしれないと。