向田邦子さん

録画しておいた『阿修羅のごとく』『冬の運動会』を観た。
向田邦子さんのファンになってまだ日が浅い。昨年の正月に放送された『向田邦子の恋文』を観て、なんて素敵な人なのだろうと思った。文筆家としては、敬愛する頑固爺・山本夏彦さんが褒めちぎっている。「突然あらわれて、それなのにすでに名人」
はじめて読んだ向田さんの小説は『父の詫び状』文章からは昭和のなつかしい匂いがして、言葉使いがとても美しいと思った。いまにして思えば、彼女の文章に触れたおかげで、きちんとした日本語を書くように務めているのかもしれない。
日々の暮らしを題材にした随筆は数多あるが、向田邦子さんの随筆が他より抜きん出ているのは、だれもが普段見落としがちな小さなかけらを拾い上げ、その部分を丁寧に描いているからだろう。それは『霊長類ヒト科動物図鑑』などを読めばよくわかる。
人なつこくてたくさんの人から愛され、旅や美味しいものが大好きで、着るものや暮らしの道具に目利きだった向田さん。いまを生きていれば、どのようなドラマを見せてくれただろうか。