映画『つむじ風食堂の夜』

映画が公開されたのでさっそく鑑賞。東京が一番上映。こういうとき東京は素敵。
監督は篠原哲雄さん。様々なタイプを撮るので、見境ないと嫌みに思うところが大人げないが、田中麗奈さん主演の『はつ恋』や『山桜』、あと『地下鉄に乗って』はよい作品だと思う。
主人公を演じるのは八嶋智人さん。奈々津さん役は宝塚出身だそうで、名字がこの作品の町の名と同じ月船さららさん。船の字が違うか。ほかには、知らぬ間にずいぶん太られたスネオヘアーや下条アトムさん、生瀬勝久さんなどの個性的な面々。
監督がどこかで言っていた通り、原作にほぼ忠実に作られていた。ロケ地に選んだ函館の町は、想像していた月舟町を彷彿とさせたし、月舟アパートメントも、階段の段数は36段より多いようだったが、主人公が住む部屋の雰囲気も父の形見の手袋もよくできていた。クロケット定食もエスプレーソもとてもおいしそうだった。
でも作品の要である食堂のつくりは想像と違った。外観は百歩譲ったとして(想像では白く塗られた下見板張り)、客席のエンジやグリーンのビニルレザー張りのベンチシートはいただけない。渋いグリーンか茶のモケットを張った、イギリスの教会にあるような木の椅子がよかった。それと、カットされたオゴオリさんにもぜひ登場してほしかった。
などと文句をいいながら、ラストシーンの父の最後の手品には熱いものがこみ上げ、「先生ちゃんとそこにいる?」の台詞にドキッとした。
その日の晩ご飯のおかずは、言うまでもなくホクホクのコロッケをいただいた。