映画『永い言い訳』

小説のことを書いてから1年。ようやく封切られた。
映画化を考えての小説だろうから、多少の過不足があるとはいえイメージ通り。小説の雰囲気を忠実に映像化していた。原作、脚本、監督をすべて担った西川美和さんならでは。
キャストが楽しみだったが、主人公演じる本木雅弘さんはこれ以上ない適役。ご本人の性格にも似たところがあるそうで、ダメっぷりな演技に舌を巻いた。竹原ピストルや二人の子役もすばらしく、チョイ役にもかかわらず深津絵里さんの存在感はさすがといったところ。
サウンドトラックも監督らしいこだわり。架空のアニメ番組のテーマ曲を書き起こし、最後に流れる子供が弾いた『調子のよい鍛冶屋』は、ピュアで穢れがなく映像とともに余韻を残す。監督がこの作品の最終兵器と語る手塚葵の『オンブラ・マイ・フ』は、主人公を再出発に導く大切な場面で流れるが、映像とともに心に響き、涙があふれるほどグッときた。