最後にして最初の人類

店にもオークションにも在庫がないので図書館で借りた。予約が殺到していると思ったが、すぐに借りることができた。閉架扱いだった。著者は哲学者だったそうだが、難解で読みづらい文章やはじめての単語が多く、ページを繰る手が遅々として進まなかった。
映画についての投稿にも書いたが、この小説は、20億年先に生きる未来人が、現代人の精神を操り書かせたという体。20億年先の人類は、18代目で最後の人類なのだそうだ。太陽はあと50億年ほどの寿命があるそうなので、地球の寿命も同じだとすれば、人類の営みがこの先20億年続いてもおかしくないだろう。実際に23億年継続可能だとする研究が発表されている。
本著の人類史を描いてみた。さる方の受け売りだが表現はあらためている。見よう見まねで対数スケールを用いたが、このようなもの学校で習っただろうか。9期以降を端折っているが、あまり重要でなかったり、そもそも小説でも端折られていた。

各期人類の概要も書いておこう。第3期まで自然に進化するが、第3期人類は芸術としての生命創造にとらわれてしまい、直径3.6mもの脳を持つ第4期人類を造る。第5期人類は完全な人型の人造人間だが、身長は2倍、寿命は5万年。この頃には容易く生命を操ることができた。
月が地球へ衝突することが確実となり、100年かけて金星をテラフォーミングし、金星人を駆逐して移住。これより先の人類の営みは、地球ではなく他の惑星で行われる。
金星の環境に合わせて造られた第6期人類は、空をかける観念に魅了されてしまい、ついに羽の生えた第7期人類を造る。個人的にはこの第7期人類のくだりがもっとも好み。
第8期に再び宇宙的危機に直面。2万年後に太陽が白色矮星化をはじめ、5万年のうちに金星は凍りついてしまうと予測。水星へ移住する計画をはじめたが、その後巨大ガスが太陽へ衝突する見込みとなり、衝突による炎や熱から逃れるためには、海王星あたりまで離れなければならないことが判明。数世紀かけて海王星へ移住。
第9期から第13期の人類は自然と退化し、人型ではなく様々な動物のかたちをしていた。第14期で再び巨大脳の人間を造るが、進化することなく衰退。第15期で再び自然人類のかたちを造ることができ、ついに人間の本性を完成へ向けて邁進させる。
第16期人類は再びテレパシーを使えるようになり、頭のうしろにも眼が造られた。途轍もない知性のおかげで、海王星の運行を制御できるようになり、過去の人々の精神へ侵入できるようになったが、より高みへと第17期人類を造り、完璧な種を目指して第18期人類を造った。
寿命はついに25万年。頭の頂きにも眼が造られ、その視力は小さな天体望遠鏡並み。精神はより高次元化し、多人数による集団精神を起こせるようになった。哲学は絶頂を極めた。でも完璧な種を造るには時間が足りなかった。第8期の太陽の白色矮星化は早合点だったが、太陽が終焉する前に他の狂った星のせいで太陽が巨大化し、飲み込まれてしまうことが確実となった。
小説の最後は、最後の人類から最後に生まれた若者の言葉で締め括られる。

人間そのものが音楽であり、その壮大な伴奏、すなわち嵐や星たちを生み出す音楽を創造する雄々しい主旋律なのです。その限りでは人間そのものが万物の不滅の形式に潜む永遠の美なのです。人間であったとは、なんとすばらしいことでしょう。ですからわたしたちは、心の底からの笑いと平安を胸に、過ぎ去りし日々とわたしたち自身の勇気に感謝を捧げつつ、ともに前進すればいいではありませんか。どのみちわたしたちは、人間というこの束の間の音楽を美しく締め括ることになるでしょうから。