東京

3か月ぶりの上京。まん防が3/6までだったので今日に予定したが、3/21まで延長されることが先週末に決定。でも新幹線のチケットを購入済みだったので決行した。9時から開いている展覧会があったので、朝一番の新幹線で向かい、展覧会を4つはしごした。

はじめは金沢文庫。隣接する称名寺の惣門からアプローチ。通称『赤門』だそうだが、朱色がくすんでいるので落ち着く。門と通りの芯がずれていて、角度も振れている。

仁王門。鎌倉時代作の金剛力士像(阿形、吽形)が鎮座ましましているが、ハト除けの金網と陰になっているせいで表情がはっきりしなかった。門のプロポーションがすばらしい。

浄土式庭園。平泉の毛越寺(もうつうじ)を模したそうだが、脳裏に浮かんだのは木津川の浄瑠璃寺。でもこちらの金堂は立派すぎる。さすがは北条氏一門の菩提寺といったところか。

境内にあるトンネルを抜けると神奈川県立金沢文庫。必然なのだろうが素敵なアプローチ。
むかし東京へ出稼ぎに出ていたとき、仕事やプライベートで葉山や横須賀を訪れたが、金沢八景とともに金沢文庫という名称が気になった。当時はまだアナログの時代だったので、簡単に調べることができずにそのうち忘れてしまった。このあたりの土地はむかしから金沢といい、そこへ北条氏が文庫をつくったので金沢文庫。そのままだった。
展覧会は『春日神霊の旅-杉本博司 常陸から大和へ』。上京のきっかけ。芸術新潮のおかげ。

展示室の入口。江之浦測候所の明月門に掛かる門幕と同じものだろうか。紋章が称名寺で見た三鱗紋のようだと思ったら、原初の幾何学である三角について、杉本さんも小田原文化財団のウェブサイトに書いていた。笑っている目のようにも見える。犬か、それとも狐か。
展示は2フロア。1階のメインは十一面観音立像だろうか。細部を省略した造形は、円空仏や木喰仏を思い起こさせる。神像だそうだが、たしかにお顔の印象が仏像とは異なっていた。
2階は盛りだくさん。宮曼荼羅ではありえない構図だという『春日若宮曼荼羅』、須田悦弘さんとの共作『銅製鹿像』や『春日神鹿像』、背中にお地蔵様を乗せた『地蔵菩薩立像・鹿像』、杉本さんの破天荒な表装がすばらしい『地蔵菩薩像』、国宝だという称名寺の書も展示していた。
図録はまだ完成していなかった。唯一のマイナスポイント。最近の図録は書籍扱いになっていることが多く、それなら地元の書店で購入できるのだが、本展の図録はそうはなっていないそうだ。配送が気がかりだったが、やむを得ないので予約をした。

次は日本民藝館。何年ぶりだろう。前回の上京で訪れようと思ったが、行程が厳しかった。特別展はなく、日時指定制の新作公募展だったこともありパスした。
いつもの可愛い窓口でチケットを購入し、玄関戸を開けて驚いた。人がたくさんいた。あんなにたくさんの人ははじめて。『民藝の100年』展の影響だろうか。複雑な気持ちになった。
特別展は『美の標準-柳宗悦の眼による創作』。改修後はじめて訪れた大展示室。木材から張り替えられた大谷石の床は新しい雰囲気をつくっていた。豊田市民芸館の床はミソがなかったが、こちらはまだ張りたてだからかあちこちに見られた。そのうちなくなるのだろうか。
展示品で楽しみにしていたのは『伊勢参詣曼荼羅』。上述の芸術新潮で紹介されていたもので、小田原文化財団から貸し出されたことに興味があった。理由を尋ねるつもりだったが忘れてしまった。外宮、内宮ともに見ごたえがあった。内宮のほうで五十鈴川に橋が2本架かっていたが、むかしはそうだったのだろうか。でもどこに架かっていたのだろう。単眼鏡を持参したので、稚気のある可愛らしい描写をはっきり見て取れた。いつまでも眺めていたかった。

南面ファサード。大谷石の塀と外壁。漆喰の蒲鉾目地と窓の縦格子がリズミカル。

本日は西館の公開日。みなさん建物だけだと面白くないのか、本館に比べて空いていた。
西館の屋根は大谷石。外からはうまく見えないが、館内に窓から美しく望める部屋がある。撮影できないので目に焼きつける。芹沢さんの小襖を楽しみにしていたが、客間は非公開だった。あとでウェブサイトを確認したが確かにそう書いてある。何を勘違いしたのだろう。

次は練馬区立美術館で『香月泰男展』。金沢文庫へ9時に入ると決め、もう1つ予定を入れようとネットを検索して見つけた。作品を観たことがなかったので楽しみだった。
予習をしなかったので、あれほどたくさんのシベリアシリーズが展示してあるとは思わなかった。そしてあれほど大きなサイズだとは思わなかった。『涅槃』の前で立ちすくんだ。印刷では表せない黒に浮かぶ死者たちの顔。よく観ようとガラスに顔をつけ、わなわなと震えた。

最後はギンザ・グラフィック・ギャラリーで『ソール・スタインバーグ シニカルな現実世界の変換の試み』。スタインバーグのことは、和田誠さんが傾倒していたくらいの知識しかなかった。作品集などは現在出版されておらず、見ることができないので、よい機会と訪れた。

ほとんどの作品が無題だったが、壁ごとにアルファベットがついていたので、Aから順に鑑賞したらDで終わり。四角い部屋なので壁は4面、AからDは子供でもわかる。なぜそうしたのだろうと怪訝な顔をしていたのだろうか、係りの方が「地階にも展示室があります」と。

1階はゆったりとしたレイアウトだが、地階は所狭しとたくさん展示されていた。はじめて観る作品たちに嬉々としてしまい、すっかり長居してしまった。