瀬戸

展覧会のタイトルに惹かれて瀬戸へ。愛知県陶磁美術館で『モダニズムと民藝~北欧のやきもの:1950’s-1970’s』を鑑賞した。国内の民藝については歴史や人物などおよそ知っていたが、北欧の同時代の作家や作品はほとんど知らないので、これはよい機会と訪ねた。
せっかくなので、他に観るものはないかと調べたところ、3つ手前の駅に吉村さんが設計した『愛知県立芸術大学』を見つけたので、先にこちらを見学した。

春休みなのかキャンパスに人の姿はなかった。守衛室で訪問の理由を説明すると、長居しなければということで許しを得た。建物に入ることはできなかったので、キャンパスの各棟を速足で観て廻った。1967年竣工なのであちこち劣化が見られたが、吉村さんの精神をあらゆる部分に見ることができた。奥村さんとともに設計された講義棟は、いまも堂々とした佇まいで、キャンパスのなかで一層際立っていた。

愛知県陶磁美術館ははじめて訪れたが、設計は谷口吉郎さんだそうだ。すっかり緑青に覆われた銅板葺きの切妻屋根と、白灰色のタイルの外壁が馴染んでいる。全体のボリュームが大きいので美術館には見えず、北陸にある温泉旅館のようだった。

展示はデンマーク、スウェーデン、ノルウェー、フィンランドと国別年代順に作品が並んでいて、私のような初心者にわかりやすくなっていた。ロイヤルコペンハーゲンやアラビア、作家ではカイ・フランクやリサ・ラーソン、フリーベリはよく知っていたが、ほかにも魅力的な作品が多くあり、かたちや釉薬の色に惹かれる作品が多くあった。
日本と北欧陶芸との接点は、1929年に柳宗悦、濱田庄司、河井寛次郎らがストックホルムを訪れたのがはじまりだそうで、ヴィルヘルム・コーゲやカイ・フランクとも交流を行い、向こうで民藝にまつわる展覧会も開催したそうだ。はじめて知れたのでよかったが、違う側面も知りたかった。どうみても民藝の作家たちの作品に影響を受けたと思われる作品があり、だとすれば作家はどのような思いで『民藝』を受け入れたのか、ほかに交流はなかったのか。