聖林寺 十一面観音立像

奈良国立博物館で『国宝聖林寺十一面観音 ―三輪山信仰のみほとけ』展を鑑賞。安置されている収蔵庫の改修工事が行われる間、東京と奈良の国立博物館でお披露目されるそうだ。
10年前に聖林寺を訪れたことがある。白洲正子さんが愛した仏様だと知り、著書『十一面観音巡礼』を読んだ。有名な一文に「世の中にこんな美しいものがあるのかと、私はただ茫然と見とれていた」があるが、私もその美に触れてみたいと桜井を訪れた。
展覧会場に安置された十一面観音は、露わな状態で展示されていて、どの角度からでも鑑賞できた。前面のアキが大きくとられていたので、目線を動かさずに全身を鑑賞できた。
大神神社境内の大御輪寺でともに安置されていた、現在は法隆寺に安置されている地蔵菩薩立像や、正歴寺に安置されている日光菩薩立像と月光菩薩立像も展示され、三輪山信仰の仏像が再会していた。ほかには、大神神社所蔵の三輪山絵図や出土品などが展示されていた。
聖林寺のホームページに改修後の収蔵庫のイメージが掲載されているが、仏像がガラスケースに収容されているように見える。東京会場ではガラスケースに収容されていたようなので、そのケースをそのまま聖林寺でも使用するのだろうか。奈良会場でガラスケースに収容されていなかったのは、先に収蔵庫に設置しなければならなかったからだろう。
でもお寺に安置する仏像にガラスケースはよいのだろうか。改修前も壁一面ガラスで仕切られてはいたが、それとこれとは別ものだろう。ご住職はガラスケースへ向けて読経することに抵抗はないのだろうか。白洲さんが聖林寺を訪れたのは昭和のはじめ。暗い本堂の囲いの中に安置され、ひざ下は隠れて見えなかった。戦後訪れたときは、現在と同じ山の上の収蔵庫に安置されていたが、明るい部屋で全身が露わになった状態は、信仰対象としての仏像を鑑賞する環境ではない、と冒頭の著書に記されている。社寺は美術館ではない。収蔵庫の改修は栗生明さんが設計されているようだが、栗生さんといえば平等院鳳翔館。鳳凰堂の歴史にそぐわない建築。
展示品が少なかったので、図録は購入しないつもりだったが、サンプルを手にして気が変わった。魅惑的なカバー、上製本、様々なアングルから撮影された十一面観音立像。三輪山や大神神社についての記事も読みごたえがありそうだった。何より価格が良心的だった。

展覧会のあとあちこち訪ねる予定だったが、空が暗く寒かったので中止し、館内に留まった。特別陳列『お水取り』、特別展示『新たに修理された文化財』、なら仏像館と廻った。
久しぶりのなら仏像館は、中央展示室に金剛力士像が展示されていた。吉野の金峯山寺のものだそうだが、安置されている仁王門が修理中なので、こちらに仮住まいされているとか。

吽形。金剛力士像も2年かけて修理されたそうだ。吽形の像内には、延元4年11月25日大仏師康成(こうじょう)作との墨書があるそうだ。西暦では1339年。683年前に彫られた。

阿形。遮るものなく観る機会はないので、とにかくその大きさに圧倒された。高さは5mだそうだが、大雑把になることなく細部まで丹念に彫られている。説明書きによれば、快慶運慶が彫った東大寺南大門の金剛力士像に次ぐ逸品だそうだ。

ずっと観たかった『頭塔』。手前にあったホテルが取り壊され、全貌が露わになっていた。GWに特別公開され、囲いの中へ入れるそうなので、瓦の下の石仏を間近に拝見したい。

駅へ戻る途中、内藤さん設計の鹿猿狐ビルヂングへ立ち寄った。Googleマップを頼りにたどり着いたが、昔ながらの道の狭い密集地。施工はさぞかし大変だっただろう。
建具や庇はいつものリン酸処理だが、外壁の窯業系サイディングははじめて見る。予算の都合だろうか。屋内は内藤ワールド。C型鋼を背中合わせにした梁、屋根下の天井は吉野桧の小幅板、階段手摺はとらや赤坂店を彷彿とさせる。デッキプレート部分の天井は張らずに現し、照明のダクトレールを組み合わせた吸音板が張られていた。天カセ、冷媒管のラッキング、排気ファン、スパイラルダクトなど、天井につく空調換気設備はすべてグレーに塗られていた。
猿田彦珈琲で喫茶。昨秋モノ・モノのインスタグラムで、豊口克平さんの『どっしり座れるトヨさんの椅子』が使われていると紹介されていて、座り心地を楽しみにしていたが、置かれていたのは水之江忠臣さんのダイニングチェア。どうしたのだろうか。