良弁杉由来

昨年末はじめて狂言を観賞したが、今度ははじめての文楽。国立文楽劇場を訪れた。
先日東大寺の開山堂を訪れたとき、写真のポスターと同じチラシが置いてあった。赤い法衣が印象的だったので1部頂き、帰りの車中でハッとした。『良弁杉由来』の良弁とは、開山堂に鎮座していた国宝良弁僧正坐像の良弁のことだった。無知なので気がつかなかった。
良弁が東大寺を開山して今年で1,250年経つそうで、10月には御遠忌法要が営まれるそうだ。本作はこれに因んだ上演のようで、あらすじも面白そうだったので鑑賞することにした。

すっかり忘れていたが、設計は黒川紀章さん。外壁から突き出た部分は櫓太鼓をイメージしているそうで、笠木は唐破風、猪目の窓に文楽の文字。夜は明かりがつくのだろうか。
二丁掛タイル(225*60)で覆われた外壁は黒一色で、国立民族学博物館を彷彿とさせる。白目地が鮮やかだったが、外壁改修をして間がないのだろうか。全体がピカピカしていた。

エントランス庇にも唐破風。朱が効いている。ルーバーは竹矢来のイメージだそうだ。

定式幕の上ににらみ鯛と大凧。恒例の正月飾りだそうだ。大凧の卯の文字は、『良弁杉由来』に因み東大寺別当が揮毫したそうだが、毎年社寺の方に揮毫してもらう慣習なのだとか。
はじめての文楽はとても面白かった。所作が美しかった。拍子木が鳴り、定式幕がスルスルと横へ開き、盆が回転して太夫と三味線が登場する。太夫の語りに圧倒された。床から遠い席だったがよく聞こえた。昔の言葉だし、独特の節回しなので台詞がよくわからなかったが、舞台上部に字幕が出ていたし、イヤホンガイドの解説と合わせて不自由しなかった。
席が4列目だったので肉眼で十分だったが、持参した双眼鏡を覗くと人形のディテールまでよく見えた。人形遣いもよく見え、人間国宝と若手とのキャリアの差がよくわかった。
作品もよかった。渚の方の舞や、幼い良弁を連れ去る鷲の迫力、桜の宮の段における桜の演出。二月堂の段では、親子だとわかり号泣する渚の方につられこちらも涙した。
狂言は短かったが、こちらは4段仕立てで2.5時間。途中トイレ休憩もあった。

劇場出入口扉の把手は、桂離宮新御殿一の間の襖につく月の字引手を模したもの。黒川さんはどういうつもりでこの意匠を採用したのだろう。単なる思いつきだったのだろうか。
観劇後、献血のために天王寺へ。難波や心斎橋のほうが近かったが、予約が取れなかった。天王寺の献血ルームは新しく、明るいインテリアは悪くなかったが、鉄道模型のジオラマや、動物のイラストやオブジェなどは必要だっただろうか。誰に向けた施設なのかと思った。
そんなことを思ったからか、献血できなかった。脈拍が100を切らなかった。外出すると脈が速くなるのはどういうわけなのだろう。抗不整脈薬なるものがあるようだが、服用すれば献血できないようだ。降圧薬は問題ないのになぜなのだろう。薬の成分がよくないのだろうか。
前回もらったダブル献血のチラシを見て、はじめて成分献血をするつもりだった。400mlの全血献血は年に3回までしかできないが、成分献血は血小板や血漿しか取らず、赤血球は体内へ戻されるので、年に24回までできるそうだ。組み合わせればより貢献できると張り切っていた。