芹沢銈介と弥勒菩薩

広隆寺の境内は新緑が目に眩しい。さまざまな色の緑が、層をなし奥行きを与えていた。
芹沢さんの展覧会を観に京都へ。移動中久しぶりに頸椎がうずき、駅に着くなり喫茶店へ避難。せっかく来たのにと舌打ちするも、しばらくじっとしていたらなんとか収まった。
前に芹沢さんの作品を観たのは大阪日本民芸館。日本民藝館所蔵のブックデザインなどレアアイテムを観られてよかったが、スペースが広くないので物足りなかった。でも今度は2フロアにまたがっての約100点。なじみのいろは文屏風や丸紋いろは八角屏風をはじめ、さまざまな文字絵や着物、スケッチ、蒐集品など見応えがあった。なかでも山形の生活用具を大胆にあしらった屏風や曼荼羅風屏風、法然、親鸞、観音様の尊像が印象的だった。ショップで購入した別冊太陽に自邸の応接間が載っていたが、そういえば自邸は静岡の芹沢銈介美術館に移築されている。いつか訪れたいと思っている場所だ。
展覧会のあとは、弥勒菩薩を拝観するため広隆寺へ。単眼鏡を忘れてしまい凹んだが、目の前で観られるようになっていた。このお寺の弥勒菩薩は中宮寺の如意輪観音と同じ半跏像で、右手の指先を頬に当てる仕草も同じ。どちらも甲乙つけがたいが、指先の造形は弥勒菩薩のほうが美しい。頬に当てた中指がより細くより長く、親指につけた中指のかたちがとても繊細。
帰りに弥勒菩薩の本と芸術新潮を購入。芸術新潮は創刊750号だそうで、永久保存版古事記特集。数年前なら見向きもしなかっただろうが、伊勢詣をはじめて、神社仏閣仏様に目覚めたおかげで、学生のころは苦手だった歴史がいまは楽しい。巻頭の対談で、「古代史を知るには宗教、神話、芸能、祭りを知らなければならない」と梅原さんも言っている。