茶室起こし絵図

大阪くらしの今昔館で『大工頭中井家伝来 茶室起こし絵図展』鑑賞。茶室や茶事は、仕事でもプライベートでも触れる機会がないので不勉強。茶室起こし絵図のことも知らなかったが、何かのきっかけで展覧会のことを知り、模型好きの好奇心がくすぐられた。どうせならレクチャーを受けようと、前館長・谷直樹さんと京都工繊大教授・日向進さんの講演がある日に訪れた。
中井家は江戸幕府の大工頭をつとめた家柄で、二条城、江戸城、駿河城、名古屋城などを造営。1,000石を知行したうえ従五位下大和守に叙任。城だけでなく、石清水八幡宮、延暦寺根本中堂、仁和寺五重塔、東寺五重塔などを造営。国宝や重文の多くを手がけていた。
現在も家系は続いていて、茶室起こし絵図を含め江戸時代からの資料を自前で保存してきたが、劣化や破損が進んできたので、2006年に今昔館へ寄託したそうだ。なぜ今昔館にと思ったが、13代当主と谷直樹さんは、大学が同じで親交があるのだそうだ。それらの資料5,195点は、2011年重要文化財に指定され、文化庁や住友財団の補助を受けて保存修理が行われたそうだ。
茶室起こし絵図は、設計図だと思っていたがそうではなかった。当時現存していた茶室の記録としてつくられた。記録なら図面でよいと思うが、はじめに依頼したのは文化人・近衛家熈(いえひろ)。単なる立面図や展開図ではなく、それらを立てて見た目に楽しいものにした。
待庵にはじまりたくさんの茶室起こし絵図が展示されていたが、惜しむらくはその展示方法。壁面ケースでの展示だったが、ガラスの向こうで水平に置かれているので、絵図の壁の向こう側がまったく見えない。床を斜面にしたかったそうだが、文化庁が許可しなかったとか。

展示室の中央には、竹中大工道具館が所蔵する茶室『蓑庵(さあん)』の原寸模型が展示されていて、中へ入ることができた。実物が建つ大徳寺玉林院は通常非公開なので、せめて骨組だけでも味わいたい。いや骨組が見られるほうが貴重か。竹中大工道具館にある茶室『一滴庵』は『蓑庵』の写しだそうなのだが、不定期公開なのでいまだ見学叶わず。『一滴庵』を含む茶室棟は、竹中統一さんのお母様が生前建てたものだそうで、道具館をつくるとき残された。
大阪くらしの今昔館のYouTubeチャンネルに、上述の日向さんや、組み立てを行った耕木社・阿保昭則さんの解説が公開されている。阿保さんは竹中大工道具館のYouTubeチャンネルにも登場していて、大工らしからぬ物腰に魅了され、すっかりファンになってしまった。