16年ぶりの民藝特集

久しぶりの芸術新潮。ロゴが変わっていると思ったら4年前からだった。エヴァが表紙の号までが旧ロゴで、翌月の運慶特集から現在のロゴになっている。まったく気づいていなかった。
特集タイトルが仰々しく、柳宗悦をインフルエンサーと形容していて苦々しいが、記事の内容は総じてよかった。土井善晴さんのグラフは美しく、小池一子さんと深澤直人さんの対談は読みごたえがあり、日本民藝館で働く方々のお話しはおもしろかった。そして高木崇雄さんが解説する10のQ&Aは勉強になった。民藝や工藝の論者で、現在最も信頼のおける方だと思う。
Q6に登場した三宅忠一や日本民芸協団を検索したところ、日本工芸館にたどり着いた。この施設は知っているが訪れたことはない。『全国の民藝館』に載っていないからだが、記事を読んでその理由を理解した。記事では団体は解散したとあるが、施設は残っているようだ。Google ストリートビューによれば、最近ホテルに建て替えられたようだが、『日本工芸館』のサインが見えるので、ホテルの中に施設をつくるのだろう。今度なんばへ行ったときに見てこよう。建て替えられたのであれば、悔やまれるのは旧施設。いまになり浦辺鎮太郎の設計だと知った。
特集の最後に吉田璋也が紹介されていたが、彼と三宅忠一は「しゃぶしゃぶ」でもつながっていた。三宅のお店『永楽町スエヒロ本店』の看板メニューは「しゃぶしゃぶ」だが、元来この料理を創作したのは吉田だった。軍医として赴任した北京でシュワンヤンロウという羊肉の鍋料理に出会い、終戦後に住んでいた京都の『十二段家』へ調理法を伝授。羊を牛に替え、「牛肉水だき料理」として提供をはじめた。それを知った三宅は、ビフテキのほかにもお肉を食べてもらおうと、名前をインパクトのある「しゃぶしゃぶ」に替えて取り入れた。ちなみに吉田が店を開いた『たくみ割烹店』では、「鳥取和牛すすぎ鍋」という名で提供されている。
東京国立近代美術館で開催される『民藝の100年』はどうしても訪れたい。展覧会に合わせてこの特集が組まれたのだろうし、展覧会のタイトルから過去一番の内容となるのではないか。ちょうど同じころ『和田誠展』と『柚木沙弥郎 life・LIFE』が開催されるし、改修された大展示室を拝見しに日本民藝館にも立ち寄れば、上京する値打ちはあるだろう。