1Q84

本が売れないと聞いて久しいが、村上春樹さんには関係がないようだ。間もなく100万部に達するだろうし、品切中の札を掲げる書店が後を絶たないとか。
数年前から噂されるノーベル文学賞や、カフカ賞やエルサレム賞の受賞、来年公開される『ノルウェイの森』など、ファンにとってはうれしいのだが、それよりも新作が読みたい。『アフターダーク』から5年、『海辺のカフカ』から7年。いいかげん喉がカラカラだった。
待ちきれず発売日前日にフライングゲットし、その夜一気に読んでしまった。もったいないことをしたが、なにせ喉がカラカラだった。
読み終えて、うれしいようなさみしいような、複雑な思いにとらわれたが、人は変わるもの。いまはBOOK 3が出版されるのを静かに待ちたい。

BOOK 3は来年初夏に発売されるとのこと。やはりあの終わり方では蛇の生殺し。

首都圏外郭放水路

大雨で東京の街が浸水するのを防ぐため、地下50メートルに巨大な溜池がつくられた。
こういうのを見ると、建築の仕事など取るに足りないと思う。ミリ単位であーでもないこーでもないと頭を掻いているが、なんて些細なことだろうと思う。一方こちらはセンチやメートルの世界。「ミリ?そんなちっぽけな数字関係ないね」と柱たちがせせら笑っているようだ。
定期的に見学会を開催しているようなので、こちらにいる間に訪ねてみたい。

歴史の歴史

GWは大阪へ戻ったが、前半は腐っていた。二日酔い、友人からの叱咤、仕事。こんなことなら戻らなければと思ったが、気を取り直し、杉本博司さんの展覧会を観に国立国際美術館へ。
作品だけでなく、蒐集しているコレクションも展示されるということだが、彼の作品を観たことがない者としては、作品が少なかったらどうしようと心配した。だから『海景』がたくさん並んでいるのを目にしたとき、うれしくて泣きそうになった。緩やかな弧を描いた壁に、たっぷり間をとって配された9枚の『海景』部屋の照明は落とされ、額縁の中だけが灯っている。ベンチに腰かけて正面の海を見つめていると、周囲が一面の海になり、穏やかな波の音が聞こえてくる気がした。悶々としていたことをすっかり忘れ、こころ静かに見つめ続けた。
コレクションのほうも見ごたえがあった。古代の化石にはじまり、A級戦犯の写真、隕石、正倉院の裂、アポロ計画のときの宇宙食まで、彼の並々ならぬセンスにうなった。壁一面に並んだ東大寺二月堂焼経の深い青や、ピーター・ズントーが息をのんだといわれる当麻寺の古材が、とても美しくため息がこぼれた。作品や額装、コレクションや展示什器、空間構成。完璧だった。
図録も気が入っていた。自らコレクションを撮影し、アートディレクションを手掛けている。図録に1万円も払うのかと一瞬ためらったが、これも彼の作品なのだ。

omni Sight Seeing

昨年は細野さんをよく聴いた。トリビュートアルバムが立て続けにリリースされ、デイジーワールドが再開。細野晴臣アーカイブスVol.1というアルバムもリリースされた。トロピカル3部作やフィルハーモニーなどの旧譜も手に入れた。
東京に来てからプライベートをゆっくり過ごす時間がなく、細野さんどころではなかったのだが、昨日ヨドバシカメラで長年探し求めていたアルバムを見つけた。
不朽の名作、最高傑作と称えられているこのアルバムは、ずいぶん長い間廃盤だった。はじめて聴いたのは20年くらい前で、テープが擦り切れるまで聴いた。社会人になり、CDが買えるようになったころにはすでに廃盤。先の復刻ブームに期待したが、いっこうに再発される気配がないのであきらめていた。それが突然の出会い。うれしかった。
これを書いているいまも聴いていて、再生回数はすでに10回を超えているようだが、飽きることがない。まったく古びていない。やはり名作なのだ。

続行するにはあなたの許可が必要です

仕事場で支給されたパソコンはWindows Vistaだが、このOSはかなり鬱陶しい。
アプリケーションをインストールするとき、コマンドを実行するときに必ず現れるこのダイアログボックス。ピンと警告音を発し、背景を透過度50%くらいにして出現する。ユーザーが自分ひとりだけのパソコンで、なぜ自分の許可が必要なのだ。
ユーザーアカウント制御のやっかいなところはこれだけではない。先日データを内臓HDDから外付HDDへ移動したが、移動後にデータを開いて編集して上書き保存しようとすると、アクセス拒否のメッセージ。違うドライブへ移動したので、おかしな行動をとっていると思ったのだろうか。でも保存はできないが開くことはできる。セキュリティとしてそれでよいのか。
このシステムは無効にすることができるが、今度はタスクバーから盛んに警告してくるのでうるさくて仕方がない。XPにダウングレードするか。

三鷹の森

ジブリ美術館へ。三鷹駅から玉川上水沿いを歩いたが、せせらぎや緑が気持ちよい素敵な道のりだった。思いがけず建っていた堀部安嗣さん設計の住宅も風景に溶けていた。
美術館では、たくさんのキッズに揉まれて短編映画『メイとこねこバス』を鑑賞し、スケッチやセル画に目を細め、蔦の絡まる鳥かごのような素敵な階段をのぼり、梅図かずお邸のようないやらしい外壁にダメ出しをしたりして、けっこう楽しく過ごした。
帰りに遠回りをしてスタジオジブリと二馬力の前を通ったが、どちらも建築のたたずまいが素敵だった。道路に面して門や塀がない。大きな樹や植物が境界の代わりになっていた。

二馬力の外壁はこけら葺き。暗色なので出しゃばらず、鮮やかな緑が浮かび上がっている。このような景色を見ると、まちにとっては建築の存在感はいらない。