Vitraのイームズ展

和歌山までイームズ展を観に行った。イームズ展は、3年前にサントリーミュージアム天保山で開催されたが、今度はヴィトラが主催なので、違った趣向になるということだった。
会場が和歌山なのでためらった。来年3月まで待てば大丸ミュージアムで鑑賞できる。でも誰かのブログに書いていた。「天井高さを利用した特大パネルを展示しているが、あれは大丸ミュージアムでは不可能だろう」「レイ・イームズの引き出しコレクションにワクワクした」。
南海電車でトコトコ一時間かけてたどり着いた和歌山は、素朴でのどかな街だった。駅前にはむかしながらの商店街があり、むかしながらの八百屋や花屋や金物屋が軒を並べていた。
しばらく歩くと中華そばのノボリを発見。思い出した。和歌山といえば和歌山ラーメンだ。道行く人に美味しい店を聞きだし、山為食堂の暖簾をくぐった。こってり豚骨と薄口しょうゆのスープが絶品で、とろとろのチャーシューを載せて食べる白飯は格別のうまさだった。
イームズ展は、3年前の感動には及ばなかった。世界を巡回した大回顧展という割には小さくまとまり、展示物もほとんど知っていた。特大パネルも大したことがなかった。とはいえ、プライベートな書簡、カザムマシン、シェルチェアやシェーズロングの金型など、はじめて見るものがあったし、レイ・イームズの引き出しコレクションもよかった。レイが実際に使っていたキャビネットの引き出しと中身を、この展示のために作られたチェストに入れて展示していた。人形やインクビン、布地、クシ、クリップ、ペーパーなど、引き出しを開けては楽しんだ。

Gatewayふたたび

パソコンメーカーのGatewayが日本へ再上陸するとニュースが伝えていた。
はじめて買ったパソコンはGateway2000だった。使い物にならないソフトがついておらず、高スペックなのに割安で、24時間の電話サポートがついていた。
直販のはしりといわれ、業界に新風を巻き起こしたが、双壁のDELLが台頭し、やがてその風も弱まった。挽回しようと、名前をGatewayにし、一般受けするファンシーなロゴマークを打ち出した。直営店を設け、様々なキャラクターグッズをつくった。
でも2001年夏、Gatewayは突如日本から撤退した。ニュースで知りすぐにウェブサイトを訪ねたが、トップページはすでにお詫びのメッセージに変わっていて、まるで夜逃げのようだと思った。どれほどのユーザーがいたか知らないが、なぜ事前に通知しなかったのか。これがサービスを提供する名の知れた企業のすることか。腹が立ったのですぐDELLに切り替えた。
いまはパソコンも行き渡り、販売台数は減少の一途だそうだが、そんな土俵に再び上がるとは大した度胸。それとも向こう見ずなだけだろうか。

Herbis Plaza Ent

用事で梅田へ出たついで、オープンした『ハービスプラザ・エント』へ立ち寄った。
お目当ては雑貨店の『アンジェ』代官山の書店『ユトレヒト』がセレクトした書籍コーナーがある。前からこの書店のチョイスには一目を置いていたので、オープン前から楽しみにしていた。
売り場にはいろんなジャンルの本が所狭しと並んでいて、わくわくしながら一冊一冊手に取った。土産に増田れい子さんのエッセイと、ルーシー・リーの作品集を購入。
帰りにビルの中を巡った。インテリアも建築も、いまは軽く透明へとベクトルが向いているように思うが、この施設は商業施設の王道を行っていた。シックでエレガントでゴージャス。エスカレーターの意匠ひとつとっても並々ならぬものがある。

障子

障子について考えている。きっかけは林雅子さん監修の『障子の本』1978年発行で、とうのむかしに絶版となっている。古書はなかなか出回らず、読みたくても読めなかったのだが、地元の図書館にあることがわかり、さっそく借りて読んだ。
20年以上前の本だが、いまでも十分に通じる。著名人の書き物は読み応えがあるし、あまり紹介されることのない障子の性能データが詳しく書かれている。

南極プロジェクト

asahi.comで掲載中の『南極プロジェクト』そのなかの『ホワイトメール』という毎日更新される日記を読んでいる。昨年12月3日にオーストラリアのフリーマントルを出航し、10ヶ月ものあいだ毎日欠かさず書かれているとか。たいしたものだ。
これまで観測隊や昭和基地はおろか、南極そのものについてもほとんど知らなかったが、『ホワイトメール』のおかげで少しは南極に近づけた。オーロラがとてもきれいで、太陽が昇らない季節がある。雑菌がないので風邪を引かず、雑菌がないので野菜が何ヶ月も持つ。片道1000kmを1ヵ月もかけて移動し、その地の最低気温がマイナス80度にもなることなど。
想像のおよばない世界を『ホワイトメール』は仔細に伝えてくれる。すばらしいコンテンツ。

解夏

主人公たちを優しく包む長崎のまちがよい。石畳の坂、趣のある古寺、真白な教会。
キャスティングもよかった。難しい役を好演した大沢たかおさん。彼を温かく見守った二人の女性―石田ゆり子さんと富司純子さん。彼女たちの立ち姿は凛として気品が漂っていた。そして、松村達雄さんもいぶし銀の演技を見せていた。
この作品の監督・磯村一路さんは、むかし映画館で見た『船を降りたら彼女の島』の監督だった。瀬戸内の美しい風景や、主人公の揺れ動く思いを静かに綴った佳作。押尾コータローさんがつま弾くギターの音色が印象に残っている。
監督は美しい場所が好みのようだ。まもなく公開される『雨鱒の川』は北海道が舞台。『がんばっていきまっしょい』の舞台は愛媛だった。瀬戸内の景色は穏やかで美しい。