来年の手帳とカレンダーを買いに心斎橋へ行くと、そごうの隣りのビルが完成していた。
まるまるルイ・ヴィトングループのお店が入っているそうで、屋上には大きなキラ星が輝いている。凹凸のない真四角な建物は、低層部のほとんどを壁で閉じ、いちょう並木に溶け込むように考えたというマーブル模様の石はなんだか異様。たしか隈さんは、「これからは周囲を圧倒する『勝つ建築』ではなく、強いが見えない『負ける建築』」と言っていたのではなかったか。
建築家を含めデザイナーは自己主張の生き物。奇をてらわない方でも、ほんの小さな自分らしさを込めたいと思っている。かまわないのだが、それが品よくさりげなくできるかどうか。
先日出演していた番組を見て思ったが、深澤直人さんは少し毛色が違うようだ。
深澤さんのプロダクトは知っているが、人となりについては知らなかった。深澤さんのデザインがキラキラしていてまぶしいので、よく知ろうとしなかった。
IDEOでデザイナーとしての個性に苦悶していたころ、高浜虚子の『客観写生』に出会ったとか。「自分を打ち出すことは醜い。主観を消して淡々と描写してこそ人々の共感を呼ぶ」
たしかに、彼が参画している無印良品の品々は『客観写生』そのもの。個性を押しつけることがないので時代を超えて愛される。アノニマス。民藝の精神にも通じるだろう。
番組のワンシーン。小さな別荘で、麦藁帽をかぶり芝を刈りながら呟く。「世の中は複雑すぎる。本当はみんな単純なのに複雑になりたがる。草を刈るように単純に暮らせばいいのに」