ひとりメセニー・グループ

2年ぶりパット・メセニーの新譜。何も知らずに聴けば、ソロではなくメセニー・グループの演奏だと思ってしまう。幾重にも織り重なったシンフォニーは、いつものメセニー・グループ節そのもの。でも間違いなくこれはソロアルバム。クレジットにはパット・メセニーの名前のみ。
彼はこれまでにもひとり多重録音をした実験的アルバム『ニュー・シャトークァ』をリリースしているが、本作は多重録音ではなくすべての楽器が同時に演奏されている。彼がギターを爪弾き、ほかの楽器はアクチュエイタという機械が演奏している。機械が演奏しているが、繊細なタッチから大胆なアプローチまで、人間が演奏するのと変わらない。
タイトルの『ORCHESTRION』とは、19世紀から20世紀初頭に実在した、オーケストラをすべて機械で演奏してしまおうというもので、彼はそのコンセプトを現代技術で21世紀に再現した。つねに挑戦し探究する彼の姿勢には脱帽する。これだから彼から目が離せない。
それにしてもすごい楽器の数。これらの楽器はただおまかせで演奏するのではなく、彼が爪弾くギターやキーボードとリンクしているそうだ。つまりは即興。即興といえばライブということで、この壮大なセットを従えて6月に来日する。楽しみだ。