来年開催される愛知万博のイタリア館に、目玉として門外不出のブロンズ像が展示されるとニュースが伝えていたが、おかしな話。自然の叡智がテーマなのに、なぜブロンズ像が必要なのか。そうでもしないと人が集まらないのであれば、万博などしなくてよいと思う。
ところで、現在進められている愛知万博の計画は、1996年にはじめて国際博覧会協会へプレゼンテーションを行った内容と異なるそうだ。原研哉さんの『デザインのデザイン』に書かれていた。原さんは、結成当初のチームでアートディレクターを務めていた。
自然の叡智をテーマにするのであれば、森の中に会場を設け、そこで高レベルの環境テクノロジーを実現し、自然とテクノロジーの共存を象徴的に実践する。そして、従来のパビリオン林立型ではない新しい展示を試みる。これが当初の構想だったそうだ。具体的なプランを見ていないが、実現すれば素敵な博覧会になっただろう。それは原さんの仕事からも感じられる。
実現に至らなかったのは、自然がテーマなのに、木を切り倒して施設を作るとは何事かということだろう。でもいったいどれだけの人が、この構想の真意を理解していただろう。木を一本切るだけで、環境破壊だと叫ぶ自然保護者は、おそらく聞く耳を持たなかったのだろう。