スクリーンが待っている

制作のことが書かれていると知り、映画を観る前に読んでおこうと手に入れた。
原作との出会いを書いた『恋』、福祉事務所や婚活パーティへの取材を書いた『出会い』、映画を取り巻く環境の変化を書いた『時代』、ロケ撮影の困難さを書いた『ホーム』、スタッフの仕事や制作過程について書いた『船』や『幸福』、役所広司さんについて書いた『山』、八千草薫さんについて書いた『花』、コロナ禍における映画の状況について書いた『夜明け前』など、面白くて、可笑しくて、切なくて。『花』は涙なくしては読めなかった。
ほかに映画とは関係のないエッセイが数編、夢日記、短編がひとつ収録されているが、どれを読んでもこの方の文章はうまいと感心する。夢の内容は凡人とは異なり独創的で、先日書いた私の夢などお恥ずかしい限り。短編は昨年雑誌『MONKEY』に収録されたもので、映画に少しだけ登場した人物の過去の出来事だったそうだ。なんてことはない市井の人たちが描かれていて、題材も小説やドラマに度々登場するようなものなのに、この方が書くと面白いから不思議。
本のカヴァーは榎本マリコさんという方のイラスト。シュールだが、これがこの方の手法だそうで、”わずかな光がもたらす奇跡のような瞬間を目にした時の、懐かしい人に会う安堵感にも似た感覚を、さまざまな記憶の断片から引き出したモチーフに落とし込んでイメージを生み出している”とか。意味ありげに見えた新幹線や小鳥は、みなこの本に登場しているアイテム。

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