木と仏像

電車に乗るたび目にする『木×仏像展』の広告。一躯の仏像の写真だが、顔の中央が縦に裂け、中にもう一面の顔が覗いている。はじめて見る仏様だし怖いもの見たさもあった。円空仏も展示されているそうなので観に出かけた。
この仏様は『宝誌和尚立像』という名で、中国に実在したお坊様だそうだ。いろいろ奇譚のある方で、このお顔も絵師が肖像を描こうとしたときに現れたのだとか。背丈は160センチで一木造。袈裟の襞と木目が溶け合い美しい。木彫の仏像は木目が現れるところがよい。年月を経た仏像は木目に凹凸ができ、乾燥割れとともに思いがけない景色が生まれる。
360度鑑賞できたので、背面の造形も観ることができた。ちゃんと造られているのか気になっていた。でも日本で最初に登場したという仏像は、背面の造形はなく横から見るとぺらぺら。純粋に信仰の対象だったので、正面だけ造形すればよいとされたのだろうか。
遠くて観に行けなかったり、近くても公開していない仏像なども展示されていて、とても見ごたえのある面白い企画だった。