minä perhonen。ミナ ペルホネン。私 蝶。この本のおかげでようやく覚えられた。
書店で見かけていたが、啓発本の類いなのではないかと距離を置いていた。読んでみようと思うことにしたのは、YouTubeで中村好文さんとの対談を拝見してのこと。コロナのせいで中止となった展覧会のイベントだったが、わざわざ展覧会場の『shell house』で収録してくださった。
楽しみにしていた『shell house』の話も面白かったが、それよりも『仕事について』や『ものと記憶について』の皆川さんの話に興味を覚え、人となりを知りたいと思った。
中学高校と長距離選手だったが、怪我のために進路を断たれる。幼少のころから絵やデザインなどに触れていて、高校3年生のときにガールフレンドの影響で絵を学ぶ。フランスに高等美術学校があることを知り、興味を覚えて卒業後に渡仏。通っていた語学学校の学友に誘われてJUNKO KOSHINOのパリコレを手伝い、ファッションに身を置くことを決意して帰国。昼間は縫製などの仕事を手伝いながら夜間学校へ通う。卒業後メーカーに勤めたのち、たった一人でミナを立ち上げる。生活費を稼ぐために午前中は魚市場で働き、午後から自分の仕事をした―ミナ草創期までをかいつまんだが、これだけでも凡ならざる方とわかる。
皆川さんには並々ならぬ人徳があるのだろう。はじめての従業員である長江青さんは、しばらく無給で働いたそうだが、皆川さんの創り出すものに惹かれ、皆川さんの人柄に惹かれたから受け入れたのではないか。ミナの洋服の生地をつくる業者さんたちも、皆川さんの洋服に対する、生地に対する思いや情熱に感じ入ったから共に歩んでこられたのではないか。
皆川さん曰く、「どんな仕事にも創造性があり、それを楽しんで、真面目に、喜びを見出して働くこと。働く喜びは、自分の外側に用意されているものではなく、内側に生まれるもの」