絶滅危惧種

梅雨が明けたそうだが本当か。たしかに今日は真夏のような天気だったが、梅雨入りしてまだ2週間。この歳で「戻り梅雨」を知ったが、紛らわしいのでやめたほうがよいのではないか。
109シネマズ大阪エキスポシティのIMAXで、『トップガン マーヴェリック』を鑑賞した。
じつは前作には思い入れがなかった。劇場公開は1986年だが、観たのはずいぶんあとになってから。それ以来観ておらず、内容もほとんど覚えていないので、先日観返してみたら特に感慨はなかった。メグ・ライアンとティム・ロビンスが出演していて驚いた程度。
それでなぜ本作を観たのかといえば、それはひとえにトム・クルーズ。予告編の映像を観て強く感動した。60歳になるトム・クルーズがF/A-18に乗っている。操縦はしていないが、後席に座り音速で飛んでいる。CGではなく本物。彼のアクションにかける情熱には頭が下がる。
感動したのはアクションだけではない。前作へのオマージュが散りばめられていたが、オープニングシークエンスからいきなり最大級。前作とまったく同じ演出だった。星々がパラマウント山へ向かうなか、流れてきたのは『Top Gun Anthem』。監督にとって、ハロルド・フォルターメイヤーの劇伴は、『スター・ウォーズ』並みに象徴的な存在だそうだ。
ダークスターのシークエンスは物語の導入としてよかった。飛ぶことしか能のないマーヴェリックの現在の仕事は、マッハ10を目指す極超音速機のテストパイロット。機体が黒なら場面全体のトーンも暗色で統一され、キャノピーが閉じる場面や夜空を飛ぶ場面は美しかった。機体がSR-71に似ていると思ったら、開発にスカンクワークスが関わっていたそうだ。
アイスマンとのシークエンスは涙なくしては観られなかった。SMSをやり取りしている時点で涙腺が緩んだが、二人が再会する場面でたまらず崩壊。あの抱擁はマーヴェリックとアイスマンの抱擁だが、トム・クルーズとヴァル・キルマーの抱擁でもあったのだろう。ヴァル・キルマーは、自身のインスタグラムにこの場面のことを投稿しているが、添えられたコメントを読みまた涙腺が緩んでしまった。「36年……、今でも僕は君のウィングマンだ」。
記事のタイトルは、エド・ハリス演じるケイン少尉がマーヴェリックへ放つセリフ。そういえば彫刻家の舟越桂さんは、「個人はみな絶滅危惧種という存在」とメモされていた。
作品に関する被写体が見つからなかったので、施設の外観を撮ってみた。はじめてまじまじと見たが、どうしようもないファサード。オフィスビルのよう。半分西へ向いているのに全面ガラス。ロールスクリーンがすべて下がっていたが、サインがなければ映画館とわからない。
ついでに。東急歌舞伎町タワーにできる109シネマズのCMが流れたが、タワー頂部のかたちが、ヘルツォーク&ド・ムーロン設計のエルプフィルハーモニー・ハンブルクを連想した。
デザイン監修は永山祐子さん。コンセプトは噴水で、あの頂部は水が湧き上がるところをイメージしているそうだが、低層部は組積に見えるし、プリントガラスも使っているようだ。
エルプフィルハーモニー・ハンブルクは、むかし雑誌か何かで計画を見ただけだったが、いわくつきとなってしまったことを知らなかった。2007年に着工し、竣工したのは2016年。予定工期は3年だったのに、10年もかかったそうだ。建設費も7,700万ユーロから7億8,900万ユーロへ1桁アップしたそうだが、負担したハンブルク市民はどう思っているのだろう。