浦和駅から西へ20分の別所沼公園。メタセコイヤが立ち並ぶ沼のほとりを一周すると、それはひっそり建っていた。詩人であり、建築家でもあった立原道造の夢の小屋。その寸法は間口2.5m、奥行6m。たった4.5坪の広さだが、あちこちに彼の宇宙が広がっていた。
そしてその窓は大きな湖水に向いてひらいてゐる。湖水のほとりにはポプラがある。お腹の赤い白いボオトには少年少女がのつてゐる。湖の水の色は、頭の上の空の色よりすこし青の強い色だ、そして雲は白いやはらかな鞠のやうな雲がながれてゐる、その雲ははつきりした輪廓がいくらか空の青に溶けこんでゐる。僕は室内にゐて、栗の木でつくつた凭れの高い椅子に座つてうつらうつらと睡つてゐる。タぐれが来るまで、夜が来るまで、一日、なにもしないで。僕は、窓が欲しい。たつたひとつ。
鉛筆・ネクタイ・窓
えらく天気のよい昼下がりで、開け放された窓に腰掛け外を眺めていると、知らぬ間にウトウトしてしまった。居心地のよい小屋。