オデッセイ

インター・ステラーのように公開前から待ちわびるわけでなく、予告編の内容もさっぱり覚えていない。関心がなかったわけだが、リドリー・スコットのSFだからと劇場へ。脳裏にプロメテウスの悪夢がよみがえっても、エイリアン信者として彼のSFを観ないわけにはいかない。
でもこの作品にエイリアンは登場しない。かといって、インター・ステラ―のような相対性理論やブラックホールや五次元などのワクワクする要素もない。火星に置いてけぼりを食わされた主人公=マット・デイモンが、救助を待つ1年以上もの間、植物学者という能力を生かし、ジャガイモを栽培して食いつなぐという単純明快なストーリー。もちろん宇宙のルールやディテールの描写に抜かりはなく、火星の俯瞰は美しい。でもこの作品ではそんなことは二の次で、見どころはスーパーポジティブに奮闘するマット・デイモン。
火星で’70が流れるのも面白かった。Vicki Sue Robinson『Turn The Beat Around』、Donna Summer『Hot Stuff』、Hues Corporation『Rock The Boat』、The O’Jays『Love Train』など、インター・ステラーにも出演したジェシカ・チャスティン演じる船長が、ミッションのお供に持参した音源だったが、聴きながらセンスが悪いと愚痴るマット・デイモンが可笑しかった。でもDavid Bowie『Starman』が流れると、先日の訃報を思い出し不意に涙がこぼれた。