絶滅危惧種

映画『四日間の奇蹟』を観に千日前国際シネマへ出かけた。この映画館ははじめてだったが、なんとも素敵な劇場だった。
商店街に面した入口を入ると鑑賞券の自販機があり、その横は受付になっている。受付のカウンターはガラスケースで、中には点々とパンフレットやお菓子が置いてある。もぎりのおじさんはスポーツ新聞を読みながらタバコをふかし、商売っ気がまるでない。
劇場へ行くには中庭を通っていくのだが、お世辞にも美しいとは言えないし、そう広くもない。見上げるとビルに囲まれている。でも表通りの喧騒とは無縁の穏やかな世界。
劇場へ入ろうと扉を開けたが、この扉が薄くてペラペラ。防音性能など関係ない。扉を開けて中へ入るとため息がこぼれた。むかしながらの演芸場、あるいは聖堂といったところか。真ん中に床が水平な客席があり、2段上がった両袖は列柱に囲われた天井の低い廊になっている。天井が低いのは上にも客席があるからで、それはさながら大劇場のバルコニー席のよう。廊には等間隔に並んだ避難口が設けられていて、扉を開ければ先ほどの庭へつながる。
こんな設えをいまのシネコンにできるだろうか。ノスタルジーなどと薄っぺらなものでもない。映画を観る醍醐味を味わうにふさわしい劇場の姿だと思う。