自粛が明けてはじめての外出は熊谷守一さんの展覧会。平日だしこの時世なので、人はまばらと思っていたがそんなことはなく、同じように美術鑑賞を待ち望んでいたということだろうか。
熊谷さんの展覧会は二度目。前回は広島で出張帰りに立ち寄ったが、時間がなくゆっくり観られなかった。だから今回は、はじめて観るつもりでたっぷり鑑賞した。
熊谷さんの絵はとても簡素。天皇陛下に「この絵は何歳の子供が書いたのですか」と言わしめたそうだが、省略されていても対象を的確に捉えている。終の棲家に越してから30年にわたり、一歩も表へ出ずに庭で過ごしたそうだが、蟻は左足の2本目から歩き出すことを発見するほど、木や草花や虫たちをつぶさに観察して眼力が養われたのだろうか。簡素がゆえに色彩が際立ち、まるで音楽を聴いているような気持ちになる。
ショップで図録と『蒼蝿』『へたも絵のうち』、それと『モリのいる場所』を購入。『モリのいる場所』は『キツツキと雨』の沖田修一さんが監督で、山崎努さんが熊谷守一を演じ、樹木希林さんが妻を演じた。山崎さんはかねてから熊谷さんのファンで、樹木さんも山崎さんは憧れの人だったそうだ。『好き』がめぐり合わせた幸せで素敵な作品。