アメリカン・ユートピア

塚口サンサン劇場の『アメリカン・ユートピア』は、やはり爆音上映だった。でもただ低音を増しているのでなく、ただラウドネスを上げているのでもない。バランスがよく解像度が高いと感じた。一音一音が明瞭で、小さな響きまで余さず再現されているようだった。
通常と異なるのはステージにある1組のスピーカーだけだったが、このスピーカーは仮設ではなく常設だそうで、いつでも『重低音ウーハー上映』ができるようになっているとか。さらには、作品が音楽やミュージカル、舞台などの場合は、作品の特性を壊さぬよう細心の注意を払い、重低音を調整した『特別音響上映』へと変化するそうだ。
音がよかったおかげか、初見のときよりも新鮮に感じた。デヴィッド・バーンと11人のミュージシャンやダンサーが、シンプルだが巧妙につくられたステージセットで、歌うように踊り、踊るように演奏していた。心地よいギターのカッティングやベース奏者のパフォーマンス、6人の打楽器奏者による重層的なリズムに頭が揺れ、そのうち身体まで揺れてしまった。
終始楽しく笑顔がやまず、ときに目頭が熱くなった。鑑賞後は陶然となり、清々しい気分で劇場を後にした。圧倒的な完成度のロックスペクタクル。まさに至福の体験。