サービスとは心を配ること

触知案内板のレイアウトを考えていて手を止めた。理不尽なことをしていると思った。
私はかなりの近視だが目が見える。だから目の不自由な方々の胸のうちはわからない。
でもこれだけははっきりしている。たとえ施設の入口の床に点字ブロックがあっても、それがホールにある触知案内板へと導いてくれても、その案内板にある点字を指でなぞり、どこにどのような部屋や設備があるかを理解しても、そこから一人で進むことは困難なのだ。
お上はだれかが決めたこのシステムを強要し続ける。実際の使い手を思うことなく、マニュアル通りの指導しかしない。人のため弱者のためなのに、そこには一滴の血も流れていない。
そうかといってうまい解決策はあるだろうか。たとえばどんな施設にも受付を備え、望みの場所まで案内するとか、レシーバーを配って遠方から誘導するとか。どれも困難だろう。
となれば、施設運営者や設計士の想像力と心配りが大切。それなのに東横インの社長は、サービス業の冠のようなホテル事業が、社会に対しどれほどの重要性を帯びているかまったく認識していない。そうでなければあのようなコメントをするはずがない。それに比べ、先日テレビで見た老舗旅館の女将はすばらしい方だった。車椅子利用の客から、テーブルやベッドの脇を車椅子が通れず苦労したとクレームを受ければ、すぐにその部屋を改めた。
サービスとは、ひとりひとりにもてなしの心を配るということではなかったか。