原作を読んだことがないので知らなかった。ドン・キホーテは騎士道に傾倒しすぎた男がでっち上げたキャラクターで、歴史上の人物でもなければ実在すらしないと。本作のドン・キホーテは、靴職人がドン・キホーテを読みすぎたせいで、自分がドン・キホーテだと思い込んでしまうのだが、ギリアムはまたおかしな脚本を書いたものだと感心していた。
映画の公式サイトによれば、テリー・ギリアムとドン・キホーテのつきあいは長く、構想30年、頓挫9回の呪われた企画だそうだ。20年前の制作時のドキュメンタリーを観れば、天災や俳優の病気、資金繰りの問題など次々と災難に見舞われる様子がよくわかる。
20年の間にキャストが変わった。ドン・キホーテ役はジャン・ロシュフォール⇒ロバート・デュバル⇒ジョン・ハート⇒ジョナサン・プライス、サンチョ・パンサ役はジョニー・デップ⇒ユアン・マクレガー⇒アダム・ドライバー。アダム・ドライバーは『スター・ウォーズ』しか観たことがなく、カイロ・レンのキャラクターが刷り込まれているので、あれほどダメ男で滑稽でボロボロな三枚目を演じられるのかと感心した。
美術もよかった。撮影はスペインやポルトガルで行われたそうだが、トレドの修道院、ガリピエンソの村、テンプル騎士団によってつくられたトマールのキリスト教修道院など、どのロケ地もすばらしくて美しかった。
これを機に原作を読んでみようと1冊入手したが、全部で6冊あるので果たして完読なるか。