大阪・関西万博

 大阪・関西万博については書かないつもりだったが、内田樹さんの文章に共感を覚えたので、数字を記録しておくために、『FYRE』を記憶しておくために全文を引用させていただいた。

 大阪・関西万博のための政府支出の「全体像」を政府が示した。インフラ整備費に8390億円、会場建設費などの直接経費に1647億円(会場建設費783億円、日本館関連360億円、途上国支援240億円、警備費199億円、万博の機運醸成38億円、誘致費用27億円など)。この他、間接的インフラ整備費約9兆円、各府省の事業費3.4兆円が示された。正気の沙汰とは思われない。
 半年だけ開催される「お祭り」に10兆を超える公金が投じられる。万博の経済波及効果は当初は6兆円超と言われていたが、だんだん縮んで2兆円になり、それも言われなくなった。その一方で、桁外れの税金がこの「高い可能性で失敗が予測されているイベント」に注ぎ込まれている。繰り返し言うが、正気の沙汰とは思われない。
 だいたい「機運醸成38億円」とは何か。その費目の存在そのものが開催まで500日を切ったがまったく機運が盛り上がらない現実をはしなくも露呈している。産経新聞系のアンケート調査では「ぜひ行きたい」が14・4%(半年前から7.0ポイント減)、「行く気はない」が33・5%(19・8ポイント増)という絶望的な不人気である。「機運」自体が存在しないのである。存在しないものを存在させるために38億円もの金を何に使うつもりなのか。「楽しみですね~」とタレントたちが作り笑いをする空疎なテレビCMを乱発するのか、日本中に街宣車でも走らせるのか。やってもその程度だろうとみんな知っているから機運が存在しないのである。
 いい加減に腹をくくって「万博中止」を決心すべきだ。今もウクライナでは戦争が続き、ガザでは市民が虐殺されている。大阪まで行ってお祭り騒ぎに興じたいというような人は日本にも世界にもいない。
 「一度始めたことはやめられない」というのは日本人がよく口にするけれど、そんな言明には何の合理的根拠もない。「それがもたらすメリットよりもリスクの方が大きいと予測されるプロジェクト」は誰が何と言おうと止めるのが正しい。そのせいで言い出した人間の面目がまるつぶれになろうが、これまで投じた資金が無駄になろうと、止めるのが正しい。
 社会福祉や教育や医療の予算のことになると「財源がない」とにべもない財務省がどうしてこんな「ドブに金を捨てるようなイベント」にだけは大盤振る舞いができるのか。その理由が私にはまったく分からない。誰か合理的な説明ができる人がいたら教えて欲しい。
 Netflixで『FYRE』というドキュメンタリーを観た。バハマの無人島でセレブたちと過ごすゴージャスな音楽フェスのはずだったが、飲食物も、トイレも、宿泊施設も、出演ミュージシャンとの契約もすべて準備不足で中止になったイベントである。高額のチケットを買って飛行機でやってきた客たちは難民のような扱いを受けて追い返された。企画者は詐欺罪で捕まった。
 でも、プロモーションのために企画当初からさまざまな場面を撮影していたので、それを素材にドキュメンタリーが一本できた。たいへんに面白かった。「大阪万博」ではそれとは桁違いのスケールのドキュメンタリーが作れるだろうと英紙が報じた。たしかに万博協会はこれを売れば赤字をいくぶんかは補填できると思う。ぜひ検討して欲しい。

引用元:『大阪万博は中止すべきだ』内田樹の研究室
http://blog.tatsuru.com/2023/12/27_0952.html (2023年12月27日閲覧)