太山寺、浄土寺、鶴林寺

神戸市に国宝建造物はあるのだろうか。調べると1件だけあった。地下鉄総合運動公園駅から徒歩30分のところにある太山寺。本堂が国宝だそうだ。他にないか調べると、小野市に浄土寺、加古川市に鶴林寺があったので、まとめて参拝することにした。

総合運動公園駅の北側は巨大な流通団地。山あいの土地開発でよく見る景色。その流通団地の北端まで歩くと、太山寺の案内標識が刺さっていたが、民家の表札ほどの大きさで雑草に埋もれていた。錆びないようステンレスでつくったのだろうが、黒文字が見えづらかった。
太山寺は谷にあるのでずっと下り坂。楽でよかったが、帰りを思うと憂鬱にもなった。

山裾の大屋根が太山寺だろうか。川は伊川と言うそうで、それで井川谷なのだ。

太山寺仁王門。他所にあったものを移築したそうで、元々楼門だったようだ。地垂木の先が見えているが、門の反対側には当初の三手先の組物と軒の復元模型がある。

往時をしのばせる参道が美しい。右側は塔頭だが、むかしは40以上もあったそうだ。

石段の先の中門をくぐると志納所。開門時間ちょうどに着いたので、他に参拝者がいないどころか志納所も留守。大声で呼びかけると、掃除用具を持った白川由美似の女性がやってきた。

国宝本堂。屋根は銅板葺き。降棟や隅棟がやわらかい。雅な印象を与えるお堂。

撮影禁止の掲示がなかったので1枚だけ。外陣ががらんどうなので建築がよく見える。

三重塔は1688(貞享5)年の建立だそうだ。屋根の逓減はほぼないが、立面は安定している。
次は浄土寺。最寄り駅は神戸電鉄小野駅だが、ここから神戸電鉄の最寄り駅が遠い。山向こうにあるので、山裾を周回して徒歩2時間、山越えだと3、4時間かかるようだ。
条件を変えて検索すると、地下鉄とバスを乗り継ぎ数駅先まで行けるルートを見つけたが、その先の神戸電鉄の時刻を調べて驚いた。昼間は1時間に1本しかなかった。
結局湊川まで戻り神戸電鉄に乗った。バカみたいに遠回りだったが、複数の地図アプリが同じルートを示したので従った。小野駅から浄土寺までは歩きたかったが、このあたりはどうしようもなく不便だった。最後の鶴林寺へは粟生駅でJR加古川線に乗り換えるが、JR加古川線も1時間に1本しかなかったので、徒歩だと浄土寺に30分しか居られない。タクシーに乗った。

国宝浄土堂。屋根が低く見えるが実際は6寸くらい。高さ5.3mの中尊阿弥陀如来像、高さ3.7mの脇侍観音菩薩像と勢至菩薩像の三尊を安置するため。いずれも快慶作で国宝だそうだ。
開祖は重源。源平合戦南都焼討で焼失した大仏と大仏殿再興の責任者。この大事業のために全国7カ所に設けた拠点寺院(別所)のうち、播磨別所として創建されたのが浄土寺だそうだ。
別所の役目はわからないが、このお堂の役目は大仏殿建設の実験台。重源が考案した大仏様の試作として建てられた。貫や挿肘木などにより柱間を広くし、天井を貼らずに高さを確保した。

東北角。右側手前の低い扉が入口だが閉まっていた。説明板の下に括りつけられた手製のボードを見て驚いた。12時から13時まで昼休みだった。Googleマップにもそう書いてあるが、まさか昼休みがあるとは思わず見落としていた。せっかくタクシーで時短したのに無意味となった。

西南角。左側の西面はすべて蔀(しとみ)戸。夕方になると陽が差し込み、床に反射し、屋根裏を照らし、堂内が光で満たされるそうだ。西を背にした三尊の足元には雲が彫刻してあり、まるで西方極楽浄土から飛雲に乗り、来迎するかのように見えるのだとか。
今日はその光景を目にすることができないが、7/中~8/中・快晴・16時~17時がベストタイミングだそうなので、その頃に再訪し、重源と快慶がつくり上げた世界を体感したい。

隅の垂木が扇状に並んでいる。美しいのはもちろんだが、隅木でなく棟木につながっているので構造的に強いだろう。軒丸瓦と軒瓦には南無阿弥陀仏の浮彫。はじめて見た。
境内をひとまわりしても13時にならなかったので、裏山の四国八十八カ所参りをしたらえらく時間がかかった。案内板に30分かかると書いてあるのに読んでいなかった。13時になるのに出口が見えなかった。でも途中でやめたくなかったので、最後は走りながら参拝して回った。

コースにはたくさんの紫陽花が植えられていて、早咲きの株がちらほら。後ろは本堂。
遅れたせいで、浄土堂の拝観は立ち止まることなく三尊を一周しておしまい。出発時刻も過ぎてしまった。帰りは歩くつもりなのでタクシーを呼んでいないし、いまから呼んでも間に合わない。だから歩いた。Googleマップナビに到着予定時刻が表示されるが、いくら早歩きしても列車の時刻より早く着かないので、最後は走ったら2分前に着いた。ぎりぎり間に合った。

粟生駅ではじめてのJR加古川線に乗り換え。型は古いが神戸線や京都線より洒落ている。
鶴林寺はJR加古川駅から徒歩30分。寺の周囲は大きな公園になっていて、休日だったのでたくさんの人がいた。国土地理院の航空写真では、1961年にはすでに整備されていたようだ。

仁王門。左側に三重塔。予習を一切してこなかったが、七堂伽藍の残る大きな境内だった。

国宝本堂。和様と禅宗様が混在。蟇股、組入天井、桟唐戸、軒の反り、海老虹梁。

国宝太子堂。宇治上神社拝殿と同じさざ波形の屋根がかかっている。やはり縋(すがる)破風というそうだ。宇治上神社拝観後、屋根について調べていてこのお堂のことを知った。宇治上神社拝殿のほうはよくわからなかったが、こちらは増築の痕跡がいたるところに見られた。

常行堂は重要文化財。太子堂に似ていると思ったら、同年代の建立だそうで、屋根も当初は檜皮葺だったそうだ。本堂を挟み対の位置にあるので、シンメトリーを考えたのだろうか。

最後に宝物館。10年前にできたそうだ。目立たないよう外壁を墨色のモルタル塗りにしたのかもしれないが、塗りムラが目についた。この玄関もきれいではない。杉板がまばらだったようだ。
模型は太子堂。架構が完全に再現されているようで、右側の増築部分がよくわかる。
床が高くなった部分は仏壇だそうで、もはや煤けて肉眼では見えないが、後壁に九品来迎図と仏涅槃図が描かれているそうだ。赤外線写真で判明したそうだが、展示室にはそれを元に製作した再現模型が展示してあり、鮮やかな色彩と見事な画に魅了され、ずっと眺めていた。
突然照明の照度が落ち、空調が止まった。受付のおじさんがやってきて、「閉館時間です」と告げられた。17時閉門ではないのかと問うと、宝物館の閉館は16侍30分だそうだ。それなら志納所で注意してほしかった。それより客がいるのに設備を止めるとは失礼だろう。

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