美しい字。著者の直筆だそうだ。自分で書いた字が読めない体たらくからすれば、うらやましくて惚れぼれする。装丁をされた葛西薫さんは、この美しい題字を生かそうと知恵を絞られたのではないだろうか。単純な構図と色彩だが、傾斜したラインは緊張を生み、崩壊と悔恨の物語を暗示しているようにも見える。
彼女は今作で新しい試みをした。安定していたものが崩れ、失われてしまうところで物語が終わるのが彼女の作法だが、今作ではそこから新しい一歩をはじめるところまで描かれている。よい方へ向かうのかさらに悪くなるかはわからないが、未来が描かれていてなんだかうれしかった。
これは映画で観てみたい。気がつくたびに調べているが、ついに公式サイトが立ち上がった。タイトルは『永い言い訳』ニンマリ。公開は来秋なので先は長いが、いまから楽しみで仕方がない。キャスティングが気になる。どうしようもない主人公は果たしてどなたが演じるのか。