普通の住宅、普通の別荘

中村好文さんはじめての作品集。とはいえそこは中村さん、いかにも建築家の作品集でございといった偉そうなところは微塵もなく、他の著作同様に中村さんの人柄が表れている。だから作品集というよりは、いつもの軽妙な読み物を読んでいるようだ。
中村さんは雑誌への発表が多くないので、未発表の住まいがたくさん掲載されていてうれしかった。とくに『プロフェッショナル仕事の流儀』で紹介されていた国際線CAの住まいの、いかにも心地よさげなピットラウンジを詳しく見たいと思っていた。ほかには、札幌の住まいは普段の中村さんじゃないところが見られて面白いし、五十嵐威暢さんの住まいもよかった。
久が原のすまいやLemm Hut、Mitani Hutも掲載されていたが、雨宮秀也さんが撮影された写真がよく、よそ行きでない普段着の暮らしぶりをうまく切り取っていた。
巻末で三谷龍二さんと山口信博さんが中村さんについて対談しているが、おふたりとも中村さんの友人で、クライアントで、作家同士。このようなおふたりの中村論がつまらないわけがなく、ニヤニヤしながら楽しんだ。