The Köln Concert

このアルバムを聴くと、学生のころに見たテレビ番組を思い出す。それは関西テレビで深夜に放送された、建築を取り上げた特番。
当時もっとも注目を集めていた建築家12人と、彼らの作品51点を紹介するもので、たしか2時間くらいあったと思う。当時はミーハー学生だったので、登場する建築家も作品もすべて知っていて、それを映像で見ることができるとあって喜んだ。原さんのヤマトインターナショナル、毛綱さんの釧路市立博物館、伊東さんのシルバーハット、槇さんのスパイラル、長谷川さんの湘南台文化センター、高橋さんの芸術情報センターなど、当時最新の建築が紹介された。安藤さんは贔屓を受けたのか、ほかの人よりも数が多く、おまけに事務所でのインタビューや、現場での撮影シーンも紹介された。そのころから注目の人だった。
当時の安藤事務所は昼食を自炊していて、服装はけっこうラフだった。80年代のよい空気が流れていた。でもいまでは商社のようだ。『情熱大陸』で事務所風景が映っていたが、所員はおろか学生バイト君までスーツを着ていた。世界の安藤事務所なので、粗相のないようにしているのだろうか。安藤さんはもうじき70歳だとか。髪が薄くなっていたが、パワフルなところはあいかわらずで、むかしと変わらずガハガハ笑っていた。
音楽もよかった。洋邦ジャンルを問わず、それぞれの建築に合う楽曲が選ばれていた。ワコールで流れていたSadeの『Is It A Crime』、眉山ホールで流れていたSwing Out Sisterの『Twilight World』、マガジンハウスで流れていた竹内まりやの『夢の続き』、福原病院で流れていたFrank Sinatraの『Summer Wind』。最後に城戸崎邸で流れていたのが、このKeith Jarrettの『The Köln Concert』。静謐なコンクリートの空間にしっとり合っていた。