木造建築

ケンプラッツにおもしろい記事が掲載されていた。マンガ『美味しんぼ』の中で、「日本の家屋で国産材の使用率が著しく低い一因は、日本建築学会(AIJ)が1959年に木造建築を否定したため」とのセリフがあったそうだ。
放っておけばよいものを、事実確認の問い合わせがAIJに寄せられたので、これはまずいと思ったのか、AIJのウェブサイトで釈明した。「たしかに木造建築禁止を訴えたが、それは伊勢湾台風のときにまとめたものの中に書いたこと。日本中の木造建築を指しているのではなく、災害危険区域内での木造建築を禁止すべきだと訴えたまで」
なかなかおもしろい記事だが、国産材の使用率が低いのはこのためではなく、外来材に圧倒されているからではないのか。それは、引いては敗戦や近代化にまでさかのぼるだろう。
焼け野原になり、住むところを失った国民に対しての政策が、火に弱い木造ではなく、鉄筋コンクリートでできた集合住宅だった。復興に励み、明るい未来を夢見た国民はこれに飛びついた。がむしゃらに働き、高度経済発展を遂げた結果、都市はおろか地方にまでこの住宅形式が林立した。おかげで日本の林業は衰退し、いつのまにか外国から安価な木材が輸入されるようになった。よかれと思って行った政策が、時を経て仇となってしまった。
もうひとつの要因は教育だろう。これも同じマンガのセリフにある。「一級建築士の試験では木造について一切扱わないし、大学でも木造建築を教えない」これについてもAIJは釈明している。「一昨年の試験には木造に関する問題があるし、改正建築士法では、大学で木造等を勉強しなければ受験資格がないと定められた」林野庁も今年5月に『公共建築物等における木材の利用の促進に関する法律』を制定したが、いずれも最近ようやく立ち上がったという感じ。設計する側も、そもそも100年前に、近代建築を夢見た建築家たちが木造を捨てたのではなかったか。