物心ついたのは80歳

柚木沙弥郎・熱田千鶴著『柚木沙弥郎のことば』。編集者である熱田千鶴さんが、柚木さんへ行ったインタビューや、お茶の時間の二人のおしゃべりなどが収録されている。柚木さんを知る術は多くないので、昨年出版された『柚木沙弥郎との時間』とともに興味深い。
柚木さんを知ったのは21世紀に入ったころだったが、そのころ柚木さんは新しいステージへ進んでいた。還暦を過ぎたころ、染色はやり尽くしたと仕事にマンネリを感じていたが、友人に誘われて訪れたサンタフェで、国立民芸博物館のアレキサンダー・ジラルドコレクションに感銘を受け、やることはまだあると一念発起したそうだ。染色は製品から作品へと変わり、グラフィックデザインや絵本、ガラス絵や板絵、版画などの仕事を精力的に行った。
はじめての海外旅行は45歳のとき。パリを訪れ、いつかここで勝負したいと思ったそうだ。機会が訪れたのは40年近く経った2003年、出版・印刷国際展にリトグラフなどの版画を出品。2008年にはギャラリーで初の個展を開催。2014年にはついに国立ギメ東洋美術館に作品の収蔵が決定。記念して開催された展覧会は盛況を博したそうだ。2018年にははじめて日本民藝館で展覧会が開催。見合わないと躊躇したそうだが、民藝への恩返しと引き受けたのかもしれない。
名前の沙弥は修行僧を意味するそうだ。99歳で修行でもないだろうが、仕事が絶えないので手を動かし続けることができる。だから創作意欲や気力が失われないのだろう。

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