佐川美術館へ『田中一村』展を観に行った。
この方のことはずいぶん前に映画で知った。『地雷を踏んだらサヨウナラ』の五十嵐匠が監督した『アダン』という作品で、田中一村の生涯を描いた。
衝撃だったのは彼の暮らし。日本画壇に見切りをつけ奄美大島へ渡るが、住まいはボロボロのバラックで貧しく、労働で得たお金は画材のために使った。絵を描くためだけに生きたとか。
五十嵐監督の作品は板谷波山を取り上げた『HAZAN』も観たが、実在の人物を描くのが上手いのだろう。狂った狼と呼ばれた田中一村を榎本孝明が怪演していた。
展示は年代順に分かれ、最後のパートが奄美時代。総天然色で描かれた『アダンの海辺』や『不喰芋と蘇鐵』もよかったが、墨で描かれた『枇榔樹の森』や『枇榔と浜木綿』も新鮮だった。
昼食を挟み、午後は講演を聴いた。田中一村の甥御さんと、一村研究の第一人者・大矢鞆音さんによる対談。いろんな話が聞け、田中一村をより知ることができた。会場は樂吉左衞門館のロビー。久しぶりに訪ねたが、うらやむほどに贅が尽くされた空間。