表紙はうたう 完全版

和田誠さんの代表作のひとつが週刊文春のカバーイラスト。40年ものあいだ続けられた。
2008年にカバーイラストを集めた『表紙はうたう』が出版されたが、一周忌である今日の日に完全版が発売された。32ページが追加されて、これですべてのイラストが収録されたそうだ。
ダイヤモンド・オンラインにカバーイラストにまつわる記事が掲載されている。2008年版『表紙はうたう』の出版の際には、印刷会社の担当者が原画の色調を再現するために、和田さんのアトリエの採光が見たいと願い出たそうだ。この方はカバーが和田さんのイラストになった時からずっと担当されているそうで、相当な思い入れがあったのだろうと思う。
そうなのだ。印刷へのこだわりだけでなく、製本もハードカバーの上製本で、2008年版は永久保存版にふさわしい造本だった。ところが今度の完全版は、ペラペラなソフトカバーの並製本に成り下がってしまった。書店で目にしたときは愕然とした。ページが増えるのに2008年版と変わらぬ価格だと知って、頑張ってくれたのだと嬉しく思ったが、製作コストを下げただけだった。
ファンとしては完全カタログをつくってくれただけで喜ぶべきなのかもしれないが、装丁好きとしてはこれでは物足りない。『星座を抱いて』は効き紙の部分だからよかったのに、遊び紙の部分に刷られてつまらなくなった。所有する喜びが半減してしまった。
雲の上で和田さんはこのつくりに満足されているだろうか。残念でならない。