西川美和さん

カバーに惹かれて手にとれば、帯には白衣を着た笑福亭鶴瓶。そういえば、医者の役で映画に出演したと言っていた。でも役者の鶴瓶さんは知らないので、まったく気に留めなかった。
その映画の監督が書いた小説ということで、読んでみればなかなか面白い。描かれる人物や世界がとても濃密で深い。リアルすぎる現実。だから時々居心地が悪くなる。読み終えたあとに気だるさが残る。でもそれがなんだか心地よい。しんどいけど心地よい。しんどよい。
だから映画も見てみた。嘘についてあらかじめ告知しているし、物語の中でもかんたんに種明かしをする。じつにあっけらかんとしている。でもそれはうわべ。ずっと奥深い部分に彼女の真意がある。それが現実的に描かれるものだから、これが見ていてしんどい。それでも鶴瓶さんらしからぬ役作りに感心したり、艶やかな八千草薫さんにゾクッとしたり、余貴美子さんのあいかわらず巧みな演技にうなったりした。
すっかり監督の虜となり、続けて『蛇イチゴ』と『ゆれる』を借りて見たが、デビュー作からすっかり出来上がっていて驚いた。人間を観察し、物語にまとめ、自らメガホンを取る。すべて一人で担うから強い。次回作が待ち遠しくなる監督。

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