DUNE / 砂の惑星

007はIMAXシアターで鑑賞しなかったが、こちらはIMAXシアターで鑑賞することしか考えていなかった。IMAX社の全面バックアップによる『Filmed For IMAX(R)』認定作品だそうで、ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督曰く、サウンドを含めIMAXを念頭に設計、制作、撮影されているそうだ。上映時間155分のうち60分以上は、アスペクト比1.43:1のフルサイズで上映されるそうなので、関西で唯一対応している109シネマズ大阪エキスポシティで鑑賞した。
のっけから感涙した。冒頭の場面は原作ともリンチ版とも異なっていた。眼下に何隻もの採取機を眺めるラッバーン。フレメンとハルコネン家の戦闘。採取機の爆発。フルサイズの映像と、座席が振動するほどの音響。この劇場を選んでよかった。本作の醍醐味はこの劇場でしか味わえないだろう。ストリーミング配信をしなくてよかった。家のテレビでは再現できない。
リンチ版に比べてわかりやすかった。リンチ版は4時間のラフを編集してしまったため、細切れで唐突なものになってしまった。1,000ページを超える原作なので、到底2時間では納まらない。ホドロフスキーが言うように10時間は必要なのかもしれない。だから監督は2部作にした。2.5時間で原作のちょうど半分あたりまで。それでも多くの場面が省かれているが、監督曰く、何が起きているか理解するのに十分なだけの情報なので、ポールがまだ直接かかわらない皇帝やフェイドは省かれた。フェイドはリンチ版ではスティングが演じたが、本作では誰が演じるだろう。
監督の作品は『ボーダーライン』よりあとしか観ていないが、一貫しているのは映像の美しさ。そのひとつが大きく俯瞰する場面。『ボーダーライン』では砂漠や雨雲、『メッセージ』では雄大な自然に浮かぶ宇宙船、『ブレードランナー2049』ではKが乗るスピナーが、一面に広がるソーラーパネルや巨大な海壁、メガロポリスの上空を飛行する。本作では、上述した何隻もの採取機、恒星間移動に用いられる巨大ホール、皇帝の使者の登場、オーニソプターの飛行、整列したサルダウカーの大軍、ハルコネン家の襲撃、サンドワームの出現などたくさんの見せ場。
監督の考える、原作の製品に限りなく近い「詩のような美しさ」は見事表現されていた。
宣伝通り俳優陣が華やかだったが、その多くが贔屓にしている方々だった。『ミッション:インポッシブル』ですっかりファンになったレベッカ・ファーガソンはレディ・ジェシカを演じ、『ドラゴン・タトゥーの女』で洒落な変態を演じたステラン・スカルスガルドはハルコネン男爵を演じていた。甥のラッバーンを演じたのは『007 スペクター』や『ブレードランナー2049』で好演したデイヴ・バウティスタだし、パイターを演じたデビッド・ダストマルチャンも『ブレードランナー2049』に出演していた。007といえば、『007 スカイフォール』で悪役シルヴァを演じたハビエル・バルデムが、フレメンのリーダーであるスティルガーを演じていた。癖なのかわざとなのか、ふうむと考える仕草が同じだった。ベネ・ゲセリットの教母を演じたのはシャーロット・ランプリング。『リスボンに誘われて』で目が印象的だったので覚えていた。
独りで鑑賞している女性が複数いたが、ティモシー・シャラメ目当てだろうか。彼は初見だと思っていたが、『インターステラー』でクーパーの息子を演じていた。ドクターユエを演じた台湾の俳優は、『椿の庭』に出演していた開襟シャツの方だった。チャニを演じたゼンデイヤは魅力的だったが、リンチ版を引きずる中年はいつまでもショーン・ヤングに縛られている。
作品にはとても満足しているが、いかんせん物語が原作の半分。多額の費用が必要なことは承知しているが、一度につくってしまったほうがよかったのではないか。本作の製作費は1.65億ドルだそうだが、もし回収できなければ永遠にPart Twoを鑑賞できないのではないだろうか。