North

大学の課題でラップランドの山小屋をトレースしたことがある。題材を探すために図書館を訪ね、モノクロームの丸太小屋の写真が目に留まった。それがラップランドの山小屋だった。
先住民族のサーメ人が住んだ小屋で、人里はなれた山奥にひっそり建っていた。長い冬に耐えるために太い丸太でつくられ、部屋の中央には大きな薪ストーブが置かれていた。
なぜラップランドの山小屋に惹かれたのだろう。10年以上も前のことで忘れてしまったが、いま読んでいる東山魁夷さんの『白夜の旅』に、答えを見つけたような気がする。
彼は書いている。「北方とは私にとっては心の中の磁針が指す方向であって、北方の風景は私の指向する世界の象徴である」「私は静かな光に照らされた風景が好きである」でも彼はこうも書いている。「厳しく陰鬱な冬の後に芽生えてくる北欧の春を見たいと思っていた」「生の悦びをよく知っているのはむしろ太陽に恵まれない北欧の人々ではないだろうか」
北欧の人々は心に静かな情熱を抱いている。それは派手ではなく穏やかなもの。

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