THE ORCHESTRION PROJECT

いまだ脳裏に焼きついている。コンガのカウントを合図に黒布が取り払われ、オーケストリオンが一斉に姿を現したときのことを。フレームに留められ何段にも積まれた楽器に圧倒され、照明できらきら輝く姿にうっとりし、これから魔法の演奏がはじまるのだとわくわくした。
あれから2年半。待ち焦がれたソフトがリリースされた。てっきりライブの模様が収録されていると思っていたが、リハーサルに使った教会でこのために演奏、撮影されたものだった。

コンサートをそのまま見せるというより、ワールドツアーでのライブの音を厳密に再現することだった。(中略)1年にわたるツアーを通じて、パフォーマンスのいろいろなパートが進化してきていることを強く感じていた。だから、ひとつひとつの曲に集中すれば、この演奏で作り上げたい成果に近づけると思った。

Pat Metheny

リーフレットからの抜粋だがなるほど。たしかにツアーの初期の演奏を収録されるより、ツアーを終えて熟成された演奏を観たい。この収録は、アルバムにはじまりライブを経てプロジェクトの総括となるもの。だからリリースを延期してでもよい記録を残したかったのだろう。
収録曲は、『ORCHESTRION SUITE』やボーナストラックを含め13曲。どの曲もよいが、とくに『メキシコの夢』のアルペジオが素敵だった。